30代、またひとつ「大人の階段」を登ったお寿司屋さんでの体験
●女子アナの立ち位置。
まるで「友人に起業を持ちかけるような」気持ちでした
先日、“清水の舞台から飛びおりる”ようなお食事をしました。
はじまりは、東京で一流といわれるお寿司屋さんを予約していた先輩から「行けなくなってしまったので代わりにどう?」という連絡をいただいたこと。しかも4人で予約をしていたというのだから、これから私がほかの3人を集めなくてはいけないという状況で(笑)。なんという無茶振りだろうと思いながらも、そんなお店、自分ひとりの力では到底たどり着けません。結構な覚悟を決めて、行きますと返事をしたのでした。
さて、返事はしたものの、気軽に誰かを誘えるようなお店ではありません。せっかくならまだ行ったことのない者どうしで、“未知の体験”として一緒に飛び込んでいけそうな友人に声をかけていくことに。「こんなことって金輪際ないかもしれない機会だと思うんだ。正直どう......?」と、誘っているときの気持ちはまさに、一緒に会社を起こそうよ!と持ちかけているような感覚。一緒にこの高い山を登らないか?と、私にとってはそれくらいの覚悟がいる話だったのです。
全員30代、えいやと飛び込んだ先で私たちを待っていたもの
よし、この高い山を登ってみよう!とひとりの友人が乗ってくれてからは、他の2人も決まり、未体験ツアーのクルーが決定。全員30代。あのお店のお席に座るには、まだまだと言って良いほど若い4人です。
「清水の舞台から飛びおりる」とはこのことだね、なんて言いながら来たる日を待ち、いざお店に足を踏み入れてみると、通されたのは個室のお席。入ってさらにびっくり、個室の中にもカウンターが。先輩、どんな予約だったんですか!?と心の中で叫びつつ(笑)、ドキドキしながらお食事がはじまりました。
「美味しさ」については私の口から言うまでもないですが、職人の方に目の前で握っていただいた一貫一貫がいとおしく、慈しみながら、芸術作品を愛でるように見入ってしまって。自分の手に乗せられたお寿司の重み、冷たさなのか温かさなのか、ありとあらゆるものをすべて一心に受けとめるように、五感が研ぎ澄まされていく感覚というのでしょうか。個室でなければ他のお客様の迷惑になってしまいそうな感嘆の声が、各々の口から溢れる瞬間でした。自分の中のなにかが次々に拓かれていき、ついには、幼い頃、初めて動物園に連れていってもらったときの気持ちを思い出していました......。
この体験を、あの日の私たちのためだけではなく、1年365日すべてのお客様に対して提供しているという尊さに心がふるえます。土俵も違いますし、レベルも全然違いますが、徹底したプロフェッショナルぶりを目の当たりにして「私も仕事をがんばろう」と強く思いました。大きな変化がなくても、淡々と日々細やかなことを丁寧に、だけど絶対に揺るがないクオリティでやり続ける。それが一番大変で難しいことだと思うんですけど、何よりも大切なことだなって。
職人さんたちだって、もちろん日々の体調の変化もあるでしょうし、奥さんとケンカすることだってあるでしょうし......いろんなことがある中でこの仕事をされているんだ、なんてことまで妄想してしまって(笑)。そんな中でベストパフォーマンスを出しつづけている、そんな姿に対して生まれた敬意や感動は、食の体験以上のものだなと思いました。
もう十分大人だけど......まだまだ「大人の階段」は残されている
本を出させていただいたときもそうでしたが、自分の思いつきだけでは絶対にできないことってありますよね。誰かが自分を見つけてくれて、何かを提案してくれて、自分の知らない世界に連れていってもらえること。そういうことに、基本的にわたしは乗っかっていきたいなと思っているんです。
とはいえ超一流のお寿司屋さんの4名分の予約を、先輩がなぜ自分よりもはるか年下の私に譲ってくださったのかは未だに謎なんですけど......(笑)。でもそれがあって、好奇心旺盛な友人たちが同じクルーに入ってくれて、みんなでエベレストに登ることができました(笑)。
カウンターで、見入ってしまうほどの美しい所作で、あんなに美味しいものをつくる。そのことにみんなで感激して、各々で素直なリアクションをとって。最高に楽しかったです。30代、同世代のみんなと行けて良かった。年齢的にはもう十分大人なんだけれど、まだまだたくさん残されている「大人の階段」を登っていく感じを共有できたことがとても嬉しかったです。本当に素晴らしい経験をしました。
ちなみに、そのとき一緒にいた仲間とは、あれから何度会っても「ていうかさ......あれ、すごかったよね......?」と、一緒にお寿司屋さんに行って感動したという話で盛り上がっています(笑)。