多様化するミレニアル世代の消費。「見栄」より「コスパ」が大事(後編)

前編に続き、9月30日にtelling,主催で開催されたビジネスセミナー「ミレニアル女性の共感をつかむマーケティングとは?」のリポートです。第2部のパネルディスカッションでは、ミレニアル女性の当事者として、「あいのり」出身で人気ブロガーの桃さん(34歳)、『アラサーちゃん』が人気の漫画家・峰なゆかさん(35歳)、「自撮り女子」としてSNSで人気のりょかちさん(27歳)がパネリストとして加わりました。 ディスカッションの2つめのテーマは、「ミレニアル女性はどんなことにお金を使うのか?」。3人それぞれに、自己分析も交えて語ってもらいました。
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第1部では、若者文化の研究に携わるマーケティングアナリストの原田曜平さんにより「高額単品消費」より「低額ちょこちょこ消費」というキーワードが示されたミレニアル世代の消費行動。実際のミレニアル女子は、日々のお金の使い方についてどう感じているのでしょうか。りょかちさんはこう語ります。

「けっこうみんなコスパは気にしますね。情報があふれている世代なので、ブランド価値というより口コミで機能的なところを調べて、実用的な面を気にしますね。また、インスタなどに投稿して残しておけるようになったことで体験の価値が高まってきて、体験にお金を払うことが増えている世代なのかなと思います」

「自撮ラー」としてSNSで人気のりょかちさん

ここで出てきた「コスパ」というキーワードに、原田さんは次のように反応しました。

「ミレニアル世代が女子高生くらいの時から、若者が『コスパ』という言葉をキーワードとしてすごく言うようになりました。昔は他の友達にすごいと思われたいとか、異性にモテたいとか、『見栄』や『モテ』の要素が大事だったのが、今ではどちらかというと実用性や機能性が重視されるようになってきたと言えます」

峰なゆかさんは、原田さんが語った「ミレニアル世代は家や車などの高額商品を買わない」という特徴について、こう指摘しました。

「家や車などを買わないのは、不安だから。お給料が順調に上がっていく気がしていないから、ローンを払っていけるか怖くて、いまあるお金で買える安いものしか買わない。いま、一番の贅沢品は、『子ども』だと思っています。1人育てるのに2千万円かかるとか言われるから、子どもが3人いると聞くと、『フェラーリを3台持っている家庭みたいですごいな』と思って尊敬してしまいます」

『アラサ-ちゃん』が人気の漫画家・峰なゆかさん

経済がゆるやかな停滞に入った時代に生まれた「成熟経済世代」ならではの価値観と言えそうです。原田さんはこう補足しました。

「昔は貧しくても子どもを生むのが当然だったので、それをコストに換算するという考え方は少なかった。今は選択肢が増えた分、価値観が多様化して、これを選択したらいくらかかるというコスト意識が高まったと言えますね」

桃さんも、「もの」より「体験」を重視していると語りました。

「私も、たとえば車を買うよりタクシーに乗ったほうがコスパがいいし、駐車場や維持費を考えると車は面倒くさいと思ってしまう。私自身、面倒くさいのが嫌いなんだと思います。ものとして何かを残しておきたいというより、海外旅行とか、今しかできないことにお金を使いますね」

「あいのり」出身の人気ブロガー・桃さん

では、いま一番お金を使っている対象は何か?3人の答えは、「海外旅行などの体験」(桃さん)、「洋服」(峰さん)、「外食などの食費」(りょかちさん)と、三者三様バラバラに。ここでも「価値観の多様化」が如実に現れました。

最後に、原田さんがディスカッションを次のように総括しました。

「ファッションや車にみんなが興味を失ったわけでは決してなくて、本当に好きなものがある人はそこに消費するという価値観が残っている。お金を使う対象が分散化、多様化しているということです。かつてのマーケティングは『この媒体に広告を載せておけばいい』、と、画一的で楽だった。それに比べてミレニアル世代は、非常にマーケティングが難しい。企業はいまから労力とお金をかけていかないと、なかなかつかめなくなってくるのではないかと思います」

消費の多様化、ロールモデルの喪失、「体験」の重視……こうした新しい価値観を持つミレニアル世代が時代の主役になるにともない、社会のかたちも大きく変わっていくことが予測されます。telling,は今後も、読者に寄り添いながら、この世代の本音の声や思いを伝えていきます。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。