カギは「ちょこちょこ消費」。ミレニアル女性の心をつかむには?(前編)

ミレニアル女性の生き方を伝え、寄り添うメディアtelling,は9月30日、ミレニアル女性をテーマにしたビジネスセミナー「ミレニアル女性の共感をつかむマーケティングとは?」を東京都内で開催しました。令和時代の消費の「主役」になっていくことが確実なミレニアル女性たちは、どんな特徴があり、何にお金を使うのか。深い議論が交わされたセミナーの様子をお届けします。

セミナーは「ミレニアル世代の特徴について」をテーマに、若者文化の研究に携わるマーケティングアナリストの原田曜平さんと、朝日新聞バーティカルメディアの後藤絵里・統括編集長とのトークセッションで幕を開けました。

原田さんは「令和時代の中心的価値観は、この世代によってつくられていくと思います」と断言。その理由を、次のように語りました。

「平成の30年間は人口のボリュームゾーンにいる団塊世代や団塊ジュニア世代が『消費の主役』で、昭和の価値観が引っ張られてきた。しかし、2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、市場の中心から徐々に離脱していきます。そうなると消費者の年齢の重心はグッとさがる。ミレニアル世代から下の世代が、マーケティングにとって重要な世代になっていくと考えられます」

トークセッションに臨むマーケティングアナリストの原田曜平さん(右)と、後藤絵里・バーティカルメディア統括編集長

原田さんはこの世代の特徴として、次の三つの点を挙げました。

少子化の先駆け世代。人口減少や移民問題など、少子化世代のベースとなる価値観をつくっていくことになる。
・成熟経済世代。日本が低成長ステージに入った平成の30年間と人生が重なる。団塊ジュニアまでが持つ「右肩上がり」の感覚がほとんどない。
デジタル世代。学生時代に携帯電話やスマホが登場し、ネットに親しんで成長した。SNSのインフルエンサーが登場した最初の世代。

こうした特徴を持つミレニアル世代は、どんなことにお金を使い、企業はどうすればその心をつかむことが出来るのでしょうか。

原田さんが指摘するのは、2000年代中盤ごろから盛んに使われる「若者の○○ばなれ」という言葉を体現するのがミレニアル世代だということ。「クルマばなれ」、「ブランド服ばなれ」、「海外旅行ばなれ」など、かつての若者の消費行動からこの世代はいっせいに離れ始めました。原田さんはこう解説します。

「ミレニアル世代はお金を使わないと思われがちで、実際、高額商品への慎重さは色々な統計からも見られます。ところが、低額なものには意外と財布のヒモが堅くない。昔の若者が貯金をして車やハイブランドの洋服を買ったのに対し、今はファストファッションに行ってワンピースを何着か買うとか、カフェを何軒かハシゴするとか、低単価なものに数多く消費しているんです」

つまり、昭和の「高額単品消費」に対して、ミレニアル世代からは「低額ちょこちょこ消費」が主流になってきたというのです。

ここで、イベントは第2部のパネルディスカッションへ。ミレニアル女性の当事者として、「あいのり」出身で人気ブロガーの桃さん(34歳)、『アラサーちゃん』が人気の漫画家・峰なゆかさん(35歳)、「自撮り女子」としてSNSで人気のりょかちさん(27歳)の3人がパネリストとして加わりました。

原田さんが挙げた「少子化世代」「低成長経済世代」「デジタル世代」という3点について、桃さんは「すべて当てはまっています」と賛同し、次のように語りました。

「少子化といえば、私は8年前に結婚しましたが、子どもについては『まだ早い』と長引いてしまって、こんな結果(離婚)になったのかなと思います。あと、ブログを始めたころはまだ先駆けで、まさかそれが仕事になるとは思っていませんでした。今は皆さんそれが仕事になって、女性でも稼げるし、良い世代だなと思っています」

パネルディスカッションのメンバー。左から桃さん、峰なゆかさん、りょかちさん

一方、峰さんは、「デジタル世代」に着目し、次のように語りました。

「ネットではオタクや非モテなどの弱者文化がメジャーになってどんどん声が大きくなっているのに、広告を作っている人は伝統的な価値観の中で育った『勝ち組』の人が多い。ボリュームゾーンである『負け組』のことを学ばないから、『自虐が流行っている』と思ってつくったものがただの『見下し』になり、炎上するようなことが起きる。『勝ち組』の感覚でいくと危ないぞ、と思っています」

小学生からネットに親しんでいたというりょかちさんも、自らを「デジタル世代」と分析。そんな中で抱える不安についてこう語りました。

「デジタルで世の中がどんどん変わって、ロールモデルがいないことが悩みでもあります。こういうファッションやライフスタイルだからイケてる、ということもないし、結婚もこうしたら幸せ、という正解がない。私の周りは迷っている人が多いな、という印象です」

(後編に続く)

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