『話し方で損する人 得する人』著者に聞く〈後編〉自分に自信をつける方法

10万部を超えるベストセラーとなっている『話し方で損する人 得する人』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者、五百田達成(いおたたつなり)さんへのインタビュー後編。今回は、自分に自信のない人が、自信を身につけるためにはどうすればいいかを伺いました。

「自分探し」をするヒマがあったら、普段の言葉を変えよう

――本に載ってるアドバイスは、どれもすぐ実行できるくらい具体的でわかりやすく書かれています。でも、なかなか実行に移せない、自信がない。そういう時はどうしたらいいでしょうか?

五百田: 例えば仕事の場面だったら、仕事用の自分を演じる、「お仕事プレイ」と思ってみるのはどうでしょうか? そうすれば、何か挑戦して失敗しても、仕事用の自分が傷つくだけでダメージが少ないはずです。

仕事の時のしっかりした自分、彼氏の前での甘えん坊の自分、友だちの中での面白キャラな自分、いろいろな人格を演じ分ければいいわけです。

ふだん無意識にやっていることですが、ちょっと強めに意識してみるだけで、だいぶ生きやすくなるはずです。

――新しく人格を作るのって、そんな簡単にできるんですか?

五百田: そのためにも話し方を変えるといいんです。「自分の殻を破れない、頭ではわかっているのに変われない」という人にオススメなのが、内面・性格ではなく、外側・話し方から変えていく、という手法。

人の性格は、他者とのコミュニケーションを通じて出来上がっていきます。「正しい敬語で話すと、きちんとした人に見られた」→「よりきちんとした人になろうとして、普段の生活でも責任感が身についた」というように、コミュニケーションが変われば、人格も変わっていくわけです。

なので、「頭ではわかっているけど自分を変えられない」と悩んでいる人こそ、ふだん何気なく使う言葉から変えるのがオススメということですね。

出版社担当奥田さん:私、実はこの本に書いてあることをいくつか実践したら、実際に変化がありました。

「相手の名前を呼びながら会話をする」とか、とても簡単なことですが、そこから周りの雰囲気が良くなったりしたんです。

ただそうした変化は、少しずつでした。

女性は、ある朝起きたらガラッと変わっているというような、シンデレラストーリーを夢見がちですが、実際は「ちょっとした変化が積み重なって、気づいたらガラっと変わっていた」ということが多いんじゃないか、と感じています。

五百田:  自分を知る、変えるというのは、だれにとっても難しいテーマです。懸命に自分探しをすることで変わる人もいますが、そうでないアプローチもあるということです。

騙されたと思って、行動を変えてみる

五百田: 繰り返しになりますが、「自信が持てない、変われない、どうしたらいいかわからない」と思っている方は、騙されたと思ってこの本に書いてあることを実行してみてください。

そうすれば必ず、周囲からのリアクションが変わります。
その成功体験が小さな自信につながり、「どうやらこのコミュニケーションでいいらしい」「自分はこういうキャラでいく」と、新しい自分が出来上がっていくはずです。

――つい誰に対しても、「無条件で本当の自分をわかって!認めて!好きになって!」と思ってしまいます。

五百田: 「本当の自分」なんていう大事なものを、だれかれ構わず見せてしまうのはオススメできませんね。普段の生活は「○○プレイ」で乗り切って、信頼できる大切な人にだけ、「本当の自分」を見せればいいわけです。

その際にも、言葉を費やさずに一方的に「わかってわかって」と要求するのはダメですよ。それでは、小さい子どもと変わりません(笑)。
前編でもお伝えしましたが、親しい相手にこそコミュニケーションをがんばるのが、正しい大人のあり方です。

――うう、厳しいですけど、身にしみます……。

 

●五百田達成(いおた・たつなり)さん プロフィール

作家・心理カウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店に入社。その後、博報堂を経て独立。『察しない男 説明しない女』シリーズほか、著書多数。米国 CCE, Inc. 認定 GCDFキャリアカウンセラー。

話し方で損する人得する人

著:五百田達成

朝日新聞WEBメディアのフォトディレクター。東京都立大学法学部卒業後、朝日新聞社入社。写真部、AERA編集部、出版写真部を経て現職。写真展に「DAYS FUKUSHIMA」 (2012年、銀座・大阪ニコンサロン)、「CELL」(2018年、ソニーイメージングギャラリー銀座)など。長崎市出身。