オーロラツアー体験記(下)

オーロラ・流れ星・天の川が同時に!フィンランドの空は奇跡の祭典だった

「死ぬまでに一度はこの目で観てみたい」と、運試しのつもりで参加した北欧・フィンランドでのオーロラ観賞ツアー。フィンランド北部のラップランド地方に到着し、いよいよバスでオーロラ観賞ポイントへ。果たして、人生初のオーロラ観賞は実現するのか……。

いよいよ、運命を決するステージへ!?

私たち日本人を乗せ、オーロラツアーバス「モイモイ号」が市街地から走ること30~40分。日本の旅行代理店が主催するこのツアーはいくつかの「観測ポイント」を持っていて、その日の天候や空の状態をにらみつつ、オーロラ出現の可能性が一番高い場所をチョイスして参加者を運んでくれる。

バスの中でオーロラ観測やオーロラについて、日本人スタッフがであれこれ説明してくれる。写真の撮り方についてのアドバイスまで。ただ、すでに日本出発から24時間以上起き続けている私には「子守唄」になってしまい、残念ながらありがたいアドバイスは一言も頭に残らなかったけれど。

真っ暗な、というより真っ黒な、とある場所でバスが停まった。人が二人立っているのが、近づいてきた懐中電灯でわかる。「コタ」と呼ばれるラップランド式の小屋の守主のご夫妻だった。

コタの中心には赤々とたき火が燃え、オイル式のストーヴが内部全体をぐるりと囲んでいて、見た目にも体感にも暖かい。湖で寒さに耐え切れなくなったらコタに戻って暖をとったり、お茶やお菓子を食べて休憩してね、ということだった。

まずはみんなでコタから100mほど先の湖へ。この湖が観測地ということらしい。湖までの道は電灯で照らされている。が、その電灯の効力範囲は地上2m程度だろうか。見上げた空は真っ黒……ちょうど新月に近い日だったから、月の出番はもっと遅い時間なのだ。

湖と星空(C)Visit finalnd / Daniel Eriksson

まさに奇跡としか言いようがない

あ!天の川!

湖に着いてすぐ遭遇したのだ、空に長くのびたミルキーウェイに。そして、一条の流れ星がすっと黒い空を撫でたのだ。もう、運を使いまくっている。でも、ここまできたらオーロラなんて見られなくても満足して帰らなきゃバチがあたるというもんだ。

けれど、私以外の参加者の「オーロラに対する思い」は並々ならぬものがある。漏れ聞こえる会話でそれがひしひしと伝わってくる。

「皆さーん、あちらを観て下さい。湖の向こう側に、うっすらアーチ状のモヤッとしたものがあるの、わかりますか?」

ガイドの女性がテキパキと言った。

「もう少ししたら、もっと濃くなると思います……そうするとオーロラですね。消えちゃったら雲の可能性もありますが、あれはおそらくオーロラだと思いますよ」

あぶり出しのように、徐々に濃くなってくるとは。実際、目の前の白いモヤに対してオーロラの感動を覚えるのはなかなか難しい。感動よりは半信半疑。もっとはっきりしたオーロラが見たいという、祈りに近い感情の方が強い。時が経つのをじりじりしながら待つ。目を凝らして、何度もしかめっ面になる。

「うっすらしたモヤッと」が「普通のモヤッと」になり、「濃いモヤッと」になってきた。こうなるとみんなカメラを取り出して、夢中でシャッターを押す。三脚を設置し、自分の場所を陣取り、湖の向こう側をいよいよ熱心に注目した。

あれ、なんかオーロラって白いんですけど……肉眼では白っぽく見えるけれど、カメラで撮影するとグリーンに写る、ということを私は初めて知った。目の前にいるカップルの会話で、バスの中でガイドさんがこの話をしていたことを知る。

目の前の「モヤッと」は白いのに、写真には緑色におさまる不思議なオーロラを、オーロラが観られた!という感動と同じくらいの大きな感動で、何度も見比べた。

はっきりと姿を見せたオーロラ。湖にも映っている)(C)Visit finalnd / Markus Killi

オーロラは気まぐれに、濃くなったり薄くなったりを繰り返す。湖にも映るほど濃く広がったかと思うと、寒さでこわばった顔をギシギシいわせながらしかめっ面をしなくてはならないほど薄くなったりもする。

時に、寒さは好奇心よりも強い

この日、外の気温はおよそマイナス5度。ラップランド地方の秋は想像以上に冷える。夜の冷気は容赦なく衣類の生地の隙間から侵入し、特に足元が底冷えした。もう耐えられない!死ぬまでに一度は観たい景色が、たった今目の前にあるにも関わらず、暖を求めてコタに避難してしまう。

……この根性なしが!自分を責めるが、寒さに悲鳴を上げる足の辛さには勝てない。熱い紅茶と手作りのクッキーをお腹に入れて生き返る。何度か湖へ足を運んでは、またコタに戻ってきての繰り返し。熱い紅茶を3~4杯は飲んだ。

オーロラと天の川を交互に眺めて、実は一度だけほっぺをつねった。日本から30時間寝ないで朦朧とした頭をしゃきっとさせて、この奇跡をもっとしっかりとした意識で確認したくて。寒さも夢の一部ではないかと思えるほど疲れて眠かったけれど、目の前には確かにオーロラが動いていた。

静かにふんわり、という言葉が適切だろうか。柔らかい生地を水中で揺らしているような。白いモヤが、ゆっくりと横に広がったり上下に伸びたりしているのがわかる。周りに人がいてよかった。彼らの歓喜の声が、夢ではないことを感じさせてくれたから。

2時間程度、湖とコタを往復し、オーロラを堪能し、参加者たちの満足のため息で充満した「モイモイ号」でホテルへ戻った。ロヴァニエミでは、平均3日滞在すると1日はオーロラが見られると言われているが、こうして私は、初めてのオーロラチャレンジにたった1日のチャレンジで運良く成功したのだった。しかも天の川と流れ星という最高のオマケ付きで。

※(C)Visit finalnd / Visit Rovaniemi(トップのコタとオーロラの写真)

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