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豆類が持つ“可能性” もっと手軽に取り入れるための方法とは?

小豆、いんげん豆といった豆類の重要性に関する認識を世界中で高めていくことをねらいとした「世界マメの日」(毎年2月10日)の記念座談会が開催されました。全国和菓子協会専務理事の藪光生さんによるモデレートのもと、豆・豆料理探検家で豆料理アドバイザーの五木のどかさん、矢野経済研究所の大篭麻奈さん、株式会社ホームメイドクッキングの加藤美弥子さんが、豆類について日頃感じていること、そして豆類の今後について話し合いました。

健康に良いイメージの豆類。世界と日本の消費の差

2018年12月に国連総会で決議された「世界マメの日」。国連のSDGs(持続可能な開発目標)において「持続可能な食糧生産」の一環として豆類が重要な作物であることが決議の背景にあります。豆は栄養豊富な食料源として世界中で広く栽培され、大豆を除いて世界で年間約8,800万トン生産されています。しかし日本の消費量は約16万トン。わずか0.2%しか日本では豆類が食べられていません。

全国和菓子協会専務理事の藪光生さん

全国和菓子協会専務理事の藪さんは「豆は根に根粒菌を持ち、空気中の窒素を根粒菌が取り込んで自分の生育に役立てる性質を持っている。そのため、土壌改良にも役立つ作物です。ところが、日本での豆の消費は少ない。これは世界からみれば特異なことと言ってもいいです」と説明します。

矢野経済研究所の大篭麻奈さん

日本における豆の需要拡大をするためにはどうしたらよいのでしょうか? 矢野経済研究所の大篭さんは、豆類消費の現状についての調査結果をみせながら分析をします。

矢野経済研究所推計

豆類食品の市場規模は、コロナ禍前まで減少傾向とはいえほぼ横ばいでした。しかし、2020年度に関しては10%程度縮小。その要因のひとつは、みやげ物需要の苦戦です。

矢野経済研究所推計

豆類食品市場は大半が和菓子やあんぱんといった、あん製品によって成り立っています。その中でも、特に消費されているのが和菓子。進物のほか、手みやげや観光みやげといった“みやげ物”として消費される和菓子は、コロナ禍によって観光・出張といったみやげ物需要が減ったことで、大きな市場縮小に至っているのです。

※矢野経済研究所調査「豆類に関する消費動向変化調査」 2020年12月実施、全国に居住する20~79歳の男女を対象、n=1,751

一方で多くの人が「栄養が豊富で健康に良い」「たんぱく質が豊富で体作りに良い」、詳しくはわからないけれど「何となく健康である」といったポジティブな印象を豆や豆料理に持っています。

「全体的に豆が健康に良いというイメージは定着していますが、女性だけをみても50歳以上の方に比べて若い世代になっていくほどに“なんとなく健康的”というところで、終わってしまっている現状があります。これから豆をより需要拡大していくためには、豆がどう健康に良いのかといった点について、理解をしていただく必要がある」と大篭さんは指摘します。

豆類のもつ栄養素と機能性。和菓子によせる期待

豆をつかった料理の中でも、日本で多く消費されているのが、あんこをつかった和菓子。調査結果では「あんこや豆を使った和菓子は美味しい」と回答した人が約6割もいました。また、全体の中でも約3割の方が「豆を原料に作られる和菓子は栄養豊富で健康に良い」としています。このことから大篭さんは「“健康”というキーワードで和菓子を支持している声がある」と言います。

※矢野経済研究所調査「豆類に関する消費動向変化調査」 2020年12月実施、全国に居住する20~79歳の男女を対象、n=1,751

では、和菓子の消費頻度は実際にどうなのでしょうか? 調査では「月1回以上食べている」と答えた人の割合が、50代以上の女性で4割を超えています。しかし、それ以下の年代では2割前後との結果に。

※矢野経済研究所調査「豆類に関する消費動向変化調査」 2020年12月実施、全国に居住する20〜79歳の男女を対象、n=1,751

「ライフスタイルやライフステージの変化が昔とくらべて大きく変わってきていて、30代前半と後半でだいぶ価値観が変わってきている」と大篭さん。「豆類食品の担い手を育てるときに、35歳〜49歳を一つのターゲットとして育成をしていくということがキーワードになってくるのではないのかなと考えています」

一方、藪さんは「誰もが健康でいたいという願いを持っている。それならば、優れた栄養素や機能性を持っている豆がもっと生活の中で生かされていい」と言います。

「人生100年時代と言われるようになって、『悪くなってから医療を受ける』から『予防』へと意識が変わってきました。そうすると日々の食生活の部分が非常に重要視されるようになってくると思います。その点について豆は栄養素が豊富でバランスが良く、ポテンシャルが高い。また仕事が忙しく調理時間や献立を考える時間をとれない人たちにとって、品数をつくるのではなく、豆をつかって必要な栄養素を補うことができれば、これからのライフスタイルに合うのではないでしょうか」(大篭さん)

株式会社ホームメイドクッキングの加藤美弥子さん

豆からはじめる“SDGs”家庭料理における可能性

株式会社ホームメイドクッキングの加藤美弥子さんは“SDGs”が豆類普及においてキーワードになる可能性があるといいます。

「お子さんが小学校の授業やテレビから、“SDGs”というものに関心を持つようになっています。だからこそ、環境負荷のない植物である豆への関心が高まっているんです。美味しく、つくりやすく、食べやすい豆料理を紹介できる絶好のチャンスではないでしょうか」と加藤さんはSDGsへの関心によって、家庭料理の面から普及できるのではないかと提案します。

「アンチエイジングの料理教室を担当した時に、どんな食材が健康に良いのかを調べていった結果、豆に行き着きました。たとえば金時豆や黒豆には、煮汁にポリフェノールが豊富に含まれています。そこで、煮汁と一緒に炊き込む料理を教室で紹介しました」

豆・豆料理探検家、豆料理アドバイザーの五木のどかさん

豆・豆料理探検家で豆料理アドバイザーの五木のどかさんも加藤さんと同様に家庭料理から豆を普及させるのが良いと提案します。

「豆の使い方がわからないという人たちが多くいます。それは、水に戻して茹でなければならない点に、ハードルの高さを感じるからかもしれません。蒸し豆や豆100%ヌードルのような手軽なものを入り口にしてもらえば、豆を使って料理をしていること自体の満足感を得てくれる人が増えていくのではないでしょうか」

加藤さんは「煮る」必要性が豆料理をとっつきにくくしているとしつつも「これまでは仕事に追われ家の滞在時間が短い人は、豆をずっと煮ている時間がとれませんでした。今はリモートワークで、おうちで料理をする時間が増えています。調理家電も便利なものがたくさんあるので、そういったものを使うのもよいのでは」と提案します。

ブームで終わらせず、持続可能なものにする

藪さんは、豆類普及には“持続可能性”が鍵のひとつだと言います。

「数年前に青えんどうのスナック菓子が売れたことがありました。そのあとには白いんげんのスナック菓子も人気になっています。しかし、どれも2年ぐらいするとほとんど目にしなくなりました。一過性のものでは意味がない」

持続可能性という点で大篭さんは、現在の豆類食品市場で大半を占めている和菓子市場が持続的に発展していくために、次世代の育成も重要だと指摘します。

一方で藪さんは海外と比べて料理としての豆の消費が少ない点を挙げ「和菓子や煮豆など既存の加工商品を伸ばすことも重要ですが、家庭の中で、豆が“料理”として食卓にあがっていけば、豆の消費がひろがっていくと思う」と、日本の食文化について言及します。

「外国では豆を一緒に煮込んだりしたものを食べる。そこに大きな違いがあって、思うように日本の食卓で豆料理が普及しないのではないでしょうか」

しかし、今よりも豆が主食になりうる可能性はあると加藤さん。実際に料理教室で、ドリアの米を豆に変えるといったレシピを教えているそう。

「既存料理のアレンジや、食材のひとつを豆に置き換えるのはとても良い」と藪さんも同意し、「肉じゃがのじゃがいもをひよこ豆に変える」といった事例を出していました。

豆料理への心理的ハードルを下げるために

一方、五木さんは豆料理に関した持論として「一豆三味(ひとまめさんあじ)」を提唱します。

「乾燥豆は200〜300グラム入りぐらいで売られています。一度に戻すと量が多い。そこで1つの豆で3つ、4つの使い方ができると良いと思います。煮込みや炊き込みごはんなど料理としての豆、甘味としての豆、あとはサラダや和え物に使うなど。いろいろな豆の料理を知っていれば、つくるものが浮かびやすい。切ったりする必要もないから、野菜よりも調理が簡単。たとえばカレーやシチュー、パスタにいれるのもいいです」

加藤さんは調理法だけでなく保存法についても知ってもらう必要があると言います。

「戻した豆は小分けにして煮汁ごと冷凍できます。昔は野菜は冷凍できないと思っていた人も多かったけれど、今はSNSやメディアで冷凍野菜を紹介して実践している人も増えました。豆も同じで、冷凍できることを知る場を提供していくことが良いのではないでしょうか。保存の仕方によってこんな料理もできますと汎用性を広めていく。そうすれば、さらに豆料理の輪が広がるのではないでしょうか」

「豆カレーを食べたいなとなっても、戻してからつくるのは大変。水煮して冷蔵しておいたり、冷凍保存しておけば、すぐ使えていいですよね。たとえば週に1度、豆を炊く日をつくれば、食卓にならぶ機会が増えるかもしれません」(大篭さん)

藪さんは、一からつくることも大事としながらも「出来合いのミートソースやビーフシチューにストックしている豆を入れれば、手軽に新しい感覚の豆料理ができる」と、豆料理への心理的ハードルを下げることから実行するのも良いのではないかと提案します。

「ヨーグルトへ茹でておいた金時豆や黒豆をいれて、メープルシロップ、ハチミツをかけるのもいいです。ホットケーキミックスに混ぜて焼くのもいい」と、料理の“一歩手前”の使い方を提案し続けることも大事だと加藤さん。ヨーグルトと豆類は相性もよく、豆類に含まれるスタキオースやラフィノースといったオリゴ糖が腸内環境を整えるのに役に立つのだとか。

豆をもっと身近に。求められる多様なアプローチ

豆料理を食べる機会自体を増やすことも重要だと五木さんは言います。

「レシピだけでは安心できないんです。料理は1回食べることで、着地点が見え、安心してつくることできます。そのため豆を入れた料理を食べさせてくれる場が今よりも必要なんだと思います」

若い人の間には、欧米で食べられているものをおしゃれさも含めて取り入れるトレンドもあると大篭さん。コロナ禍で海外旅行に行けない中、食卓で海外旅行気分を味わうのもよいのではないかと提案します。

加藤さんは、近年のパンブームにもチャンスがあると言います。

「海外の料理なら“パンと食べると美味しい豆料理”として広めていくのもいいかもしれません。中東で食べられるフムスや、フランスのカスレ、それからメキシコのチリコンカン。すべてパンにぴったり合います。そこにもアピールできるチャンスはあるのではないでしょうか」

スーパーの売り場などにおける食材としての豆の取り扱い方についても変えていく必要があるかもしれないと大篭さんは言います。

「豆は野菜ですが、乾物売り場にあります。他の野菜をカゴに入れたあとは、野菜は買ったからと自分でピリオドを打ってしまい、乾物売り場にあえて行かなくなってしまうのではないでしょうか。豆類がもっと一般消費者の目に届きやすいところに置いてもらうことも必要かもしれません」

一方、五木さんは手軽につかえる豆食品をもっと上手に活用してもらいたいと言います。蒸し豆や豆ペーストのような新しい食品も登場し、さらに大豆ミートのような置き換え食品をはじめ、豆をつかった加工食品も様々なものが発売されています。スーパー等の食料品売場に豆を使ったお惣菜や、手軽に使える豆食品がもっと置かれるようになれば、日常的に豆を口にする機会も増えていくのではないでしょうか。五木さんは「業界として(加工品などの)豆食品も一緒にアピールしていくことが大事」と言います。

最後に藪さんが本日の座談会を受けて、豆類の普及における5つの重要なポイントをまとめました。

「1つ目は豆類の持つ栄養性、機能性や健康性などの啓発をしっかりやっていくこと。2つ目は、家庭の中に豆料理を普及させる努力を行うこと。3つ目は、豆類の特性を生かした新商品の開発をメーカーなどに働きかけていくこと。4つ目は、消費の核となっている既存商品、和菓子や煮豆などについても需要拡大の取り組みを行うこと。そして5つ目は、これらの取り組みについて業界関係者が意思統一をし、一つの目標に向かってみんなで力を合わせて活動していくこと。豆類協会も含めて、業界関係者みんな揃って一緒になり、しっかり活動していくということが大事だと思います」

日本豆類協会のサイトはこちら
https://www.mame.or.jp/