『銀座シャンデリア』が銀座4丁目交差点の新たな顔に 込められた想いと遊び心
街にとって「希望の光」
突き抜けるような秋晴れの空が薄暮に変わった16時45分、ライティングセレモニーの合図とともにシャンデリアとアーチに光が灯(とも)った。4丁目交差点は、銀座通りと晴海通りの街路樹に取り付けられたイルミネーションも同時に点灯され、光の陰影を感じさせる空間となった。偶然居合わせた行き交う人たちがそれを証明するように、スマートフォンを手にして銀座三越の外壁を見あげ、写真を撮る姿があちこちで見られた。
「きれいだね」
簡単で、ありふれた言葉かもしれないが、人々が『銀座シャンデリア』を一目見て出てくる言葉からは、その響きに温かさを感じさせるものだった。
ライティングセレモニーでは、この場所の重みについて中央区の山本泰人区長がこう語った。
「明治維新以来、4丁目交差点は、人々のにぎわいと色々な人々の絆、交流を生んできた大切な場所です」
しかし、今年に入り、世界中で新型コロナウイルスが流行。日本でも緊急事態宣言により、銀座の街から人の姿が消えた時期があった。だからこそ、銀座通連合会理事長の齋藤充・株式会社銀座千疋屋代表取締役も、この外壁を「希望の光ともいえる」と例えていた。
ランドマークとしての地域の期待の大きさがうかがえる。
従業員が導き出した「大人の街×新しい時代の扉」
そんな『銀座シャンデリア』は、どのようにして生まれたのか。少し歴史を振り返ってみよう。
1930年4月10日、三越の「銀座支店」が誕生した。当時は地下1階地上6階建てで、正面玄関の上の壁面は上層階まで窓があり、特別な壁面装飾はなかったようだ。
1958年9月24日、7階の売り場が新設された時には、正面玄関上にバルーン風の壁面装飾で告知していた写真が残っている。
1984年11月13日、リニューアルに伴うグランドオープン。壁面に印象的なビジュアルやキャッチコピーの懸垂幕が降ろされ、その時々の時代を映し出してきた。
90周年を記念して2020年7月に誕生した『銀座シャンデリア』は、高さ22メートル、幅12メートルで、デザインは銀座三越の従業員から公募して決めた。
シャンデリアを提案したのは、加藤康則さんだ。
「銀座の街は、大人の街や世界の一流が集まったりする街をイメージする人が多いと思います。外壁にシャンデリアを描くことで、街の一体感を演出できるようにしました」
シャンデリアを囲むゲートを提案したのは、横田大さんだ。
「新しい時代の扉を開ける――。シャンデリアを囲むアーチ部分はゲートを意味し、新しい出会いが待っている入り口を意味しています」
加えて、向かいにある「和光」の時計塔の鐘の音との調和や経年変化で風格がでてくるように、と考えられた。
アーチに「ライオン」は何頭いるの?
荘厳さを感じさせる『銀座シャンデリア』だが、銀座三越の人たちは遊び心も忘れていない。
アーチの外側の意匠パネルには、銀座を象徴する「柳」がデザインされているほか、三越のシンボルである「ライオン」もデザインされている。ライオンが何頭いるのか、どこにいるのかは明かされず、行き交う人たちに探す楽しみを提供している。
Instagramでは、点灯したシャンデリアを背景に撮影すると1920年代に流行したモダンボーイ(モボ)やモダンガール(モガ)に変身できる「銀座シャンデリア エフェクト」を公開している。スマートフォンで公式アカウント「ginza_mitsukoshi」のエフェクトマークをタップすると、男性か女性を選択でき、変身した姿で動画や写真を撮影できる。
交差点という場所を人と車が交差するだけでなく、足を止めて時を楽しむ空間に変えてくれている。
ライトアップのカラーも時間や季節によって変わっていく。
夕暮れから午後10時は、「ゴールド」。午後10時から午前0時は、「レッド」。特別ライティングは、12月25日まで点灯される「クリスマスカラー」のほか、春バージョンの「さくらカラー」が紹介された。次回以降の特別ライティングは、「レインボーカラー」や「新年正月カラー」を予定している。
銀座の街へ幸せが降り注ぐよう想いを込めて
銀座三越の7階には新たにバブリックスペースが設けられ、『銀座シャンデリア』上部の窓から銀座4丁目交差点や晴海通り、銀座通りを普段と違った場所から眺めることができる。
銀座三越の山下卓也店長は、『銀座シャンデリア』にこう期待を込めている。
「現在も、たくさんの方々のお待ち合わせ場所となっている銀座4丁目交差点。『銀座シャンデリア』の輝きが、時代や世代を超えた新たな街の顔のひとつとなり、銀座にお越しなるみなさまや、銀座の街へ幸せが降り注ぐよう想(おも)いを込めて。次の100年も銀座の街に寄り添いながら、ともに発展していきたいと願っております」