無償でお悩み相談にのる経営者「みんな孤独だから、孤独じゃない」
みんな過去の経験を“常識”だと思っている
――モカさんは行きたくないと思ったら学校にも行かないし、自分ひとりで性転換を決断してもいる。自分を貫いているように見えます。
モカ： 昔から、人の言うことはあんまり気にしないようにしてきました。生まれつきの性格なんです。昔は反骨精神がありすぎてよくキレてたんですけど(笑)、今は人づき合いにもバランスをとることを覚えたので、経営も上手になった気がします。
――世の中の多くの人は、常識に縛られていて、自分らしい選択をすることが難しい。例えば、結婚や出産のプレッシャーを感じている人も少なくありません。
モカ： 結婚したからって幸せになれるわけじゃないですよね。自分の人生の目的をしっかり持っていないと、相手に依存してしまう。それでちょっとしたことで心配になって、余計にうまくいかなくなっちゃいませんか。
私自身は結婚しなきゃとは考えません。少子化対策とかも、国の問題意識としてあるかもしれないけど、私たちが子どもを欲しかったら産めばいいし、欲しくなかったら産まなくていい。したくないんだったらしなくてもいいって思うんですよ。
――結婚によって相手と深い信頼関係を結びたい、と考える人もいると思います。
モカ： 私は今ある関係を大切にしたいって思います。私は友達と家族と恋人の境目がよくわからないんです。それは曖昧な関係を持っているという意味ではなくて。
親友でも死ぬまで一緒に生活したいって思えば、夫婦とそんなに変わらないでしょう。
恋愛対象っていうのも、私は男性とも女性とも恋愛をしたことがありますが、これからロボットや動物にだって恋するかもしれないと思っています。みんな過去の経験から判断してそれが常識だと思い込んでいるだけなんじゃないでしょうか。
SNSでは楽しそうでも、孤独感を持っている人は多い
――いま孤独を感じている人に対してはどう声をかけたいですか。
モカ： 孤独を感じている人は多いよ、だから逆に孤独じゃないよ、ていうことですかね。インスタで楽しそうにしてたり、みんなでワイワイやっていても孤独感を持っている人は多いです。
本当に人と接する機会がない人もいると思うので、すべてに当てはまることではないかもしれないですけれどね。
――無償のお悩み相談を続けていらっしゃいますが、今後はどのような目標がありますか。
モカ： 自分が他者に貢献できる仕事として、次は就労移行支援事業をやりたいです。ウェブ関連の技術を教える学校を作ろうと計画しています。
こういうことを取材などでお話しすると、すごく「いい人」っていう印象になりそうですけど、私は気分屋だし、遅刻もするし、社会のル―ルから離脱しちゃうような人間。有名になりたいとも思わないし。いろいろ取材もしていただくけれど、ほんとうに普通の人間なんです。
【取材後記】
モカさんの取材後、本の共著者である新聞記者の高野真吾さんにお話をうかがいました。取材した時のモカさんの印象を「人の3倍くらい濃密に生きているのに、自然体で語り方も優しい人」と話します。彼女の活動の社会的な意義を強く感じたといいます。
「今回本を作るにあたり、写真や漫画を入れて、読みやすくしようと考えました。ふだん本を読まない人にも手にとってもらい、モカさんの活動を知ってほしいのです」
一方で、お悩み相談をモカさん個人の物語で終わらせたくないともいいます。
「モカさんと同じような対応を行政に求めるのは難しいけれど、行政の努力もあり自殺者は徐々に減ってきています。複数のアプロ―チがあり、それらがうまく連携できたらいいのかなと思います。その意味で行政の人たちにも、この本を手にとってほしいです」
