花粉症に「サヨナラ」したい人は必見。舌下免疫療法ってどんな治療法?

春になり「また花粉がつらい季節がやってきた」と思っている人も多いでしょう。花粉症には、鼻づまりや鼻水、眼のかゆみなどさまざまな症状がありますが、軽症であってもうっとうしいもの。2014年に始まったばかりの治療法で昨年、新薬も発売された舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)で完治を目指してみませんか。毎日たくさんの花粉症患者が訪れるという太融寺町谷口医院(大阪市北区)の谷口恭院長にお話を聞きました。

完治を目指すなら、試してみたい舌下免疫療法

――舌下免疫療法は、どんな治療法なのでしょうか。

谷口恭院長(以下、谷口): 舌下免疫療法は、日本人に多いスギ花粉症に効果のある治療法で、商品名シダトレンという液体の薬、もしくはシダキュアという錠剤を舌の下に保持した後に飲み込む治療法です。保持する時間は、シダトレンは1分間、シダキュアは2分間です。

薬は通常、水で飲み込むことが多いのですが、シダトレンやシダキュアは舌の下に含むことで体内に成分が速やかに吸収されます。口の中に薬を含んでおくなんて嫌だなと思われるかもしれませんが、シダトレンは甘酸っぱい風味、シダキュアは無味です。

――免疫療法という言葉を聞くと、なんだか難しそうなイメージなんですが。

谷口: 花粉症の人の場合、身体がスギ花粉を“敵”とみなしています。その“敵”である花粉を鼻や口から吸う、もしくは花粉が眼に付着すると、“敵”をやっつけようと免疫系の細胞が一斉に攻撃をしかけます。

その結果、身体のいろいろな部位に炎症が起こり、鼻粘膜の炎症はくしゃみや鼻水を引き起こし、結膜の炎症は眼のかゆみを引き起こします。免疫療法は、炎症が起こらない程度の微量の“敵”を薬によってあえて体内に取り入れることで、徐々に敵とみなさないようにしていく治療法です。

――シダトレンとシダキュアには違いがありますか。

谷口: どちらもスギ花粉症の薬なのですが、18年6月に処方が始まった錠剤のシダキュアのほうが保管が容易なことに加え、抗原の量が多く高い効果を期待できます。ただ、シダキュアは新しい薬なので現在は患者さんに2週間分しか処方できません。液体のシダトレンは冷蔵庫で保管しなければなりませんが、長期処方できるので、たびたび通院できない人に向いています。

ただ、今年の5月にはシダキュアも長期処方できるようになる予定なので、シダキュアで治療する人が増えると思われます。

治療5年目、つらい症状に変化が

――治療に長期間かかるので、続けられるか心配な人もいるようですが。

谷口: 完治するまで3~5年間は治療を続ける必要があります。口腔内が腫れるなど、使い始めの頃に軽い副作用が起こります。舌下免疫療法に興味のある人に說明をすると、開始する人もいれば、内服薬、目薬、点鼻薬、外用薬などでくしゃみやかゆみなどの症状を抑える対症療法を選ぶ人もいます。ライフスタイルや価値観にもよります。ただ、対症療法で花粉症が完治することはありません。

――舌下免疫療法で、実際に花粉症が治った方についてお話しいただけますか。

谷口: 当院で治療を受けているある20代の女性は、小学生の頃からスギ花粉症になり、猫アレルギーとハウスダストアレルギーも持っていました。幼少時からアトピー性皮膚炎でも悩んでいたそうです。

私は、舌下免疫療法は、スギ(とヒノキ)にしか効かず、猫やハウスダストアレルギーが治るわけではないと伝えましたが、春のつらい症状が緩和されるならやってみたいというので、2015年から舌下免疫療法をスタートしました。

2018年までは効いているのかどうか分からないようでしたが、今年(2019年)は花粉の飛散量が多いにもかかわらず、鼻と眼の症状がほとんど出ていないそうです。夜もぐっすり眠れるようになり、仕事の能率もアップしたとおっしゃっていましたよ。

毎年悪化していたアトピーも今年は気にならないようで、『鼻炎などの症状が軽くても、スギ花粉でアトピー性皮膚炎が悪化している人にすすめてみたい』と言っていました。

治療のカギは、規則正しい生活

――治療に向く人と向かない人がいるのでしょうか。

谷口: いま例にあげた20代女性が治療に成功した理由の一つに、「規則正しい生活」を送ることができたということがあります。

舌下免疫療法は、毎日決まった時間に薬を舌の下に含んでから飲み込む治療法です。パイロットやキャビンアテンダントなど時差勤務の人や夜勤のある人など、職業上、どうしても規則正しい生活ができない人は意外と多いのですが、こうした毎日決まった時間に飲むことができない人には向かない治療法です。舌下免疫療法は、途中でやめると振り出しに戻ってしまうのです。

逆に、規則正しい生活を送れる人、薬を毎日飲むことができて、副作用の說明を理解できる人には向いています。毎年いつまでもつらい症状に悩んでいるようでしたら、完治に向けてチャレンジしてみることをおすすめします。

「難しいことを分かりやすく」伝えるをモットーに医療から気軽に行けるグルメ、美容、ライフスタイルまで幅広く執筆。医学ジャーナリスト協会会員

Pick Up

ピックアップ