ソムリエが教える 家飲み×コンビニ ワイン術 02

【連載】ワインのお供は“酸っぱさ”が決め手。キアンティ×梅あられ

カジュアルな家飲みでワインもフードも楽しみたい!そんなワイン好きのミレニアルズたちの思いにこたえようと始まった、銀座のワインビストロのオーナーソムリエ兼シェフの「家飲み×コンビニワイン術」。初級編の第2回は、フードとの相性の決め手にもなる“酸っぱさ”についてです。

ワインの味わいにおける重要な要素は、“果実味”と“酸味”、赤ワインはそれに“渋味”が加わります。
まずはそれぞれの「味」の解説を。“果実味”とは、前回試してもらったチリ産ワインの、口に含んだ瞬間に感じる甘いようなフルーティーな味わいのことです。“渋味”とは、煎茶や紅茶を飲むときに感じる渋味と同質のもの。そして“酸味”は口に含んで「酸っぱい」と感じる味わいですが、ワインは他のアルコール飲料と比べて酸味の度合いが高く、味わいの半分はこの酸味と言ってよいでしょう。

ワインとフードの基本的な組み合わせとして、ひとつに「似たもの同士を合わせる」という方法があります。そこでまず試してほしいのが、酸味を持つもの同士のマリアージュです。ワインにもフードにも酸味があると、口中で合わさったとき酸味同士が一体となってしっくりきます。

味付けだけでなく、食材そのものが酸っぱくてもよいのです。例えばトマト。水煮缶で作ったトマトソースに合うワインはいくらでもありますし、それこそ塩を振りかけただけの生のトマトにこそ合わせて飲んでほしいなと思うワインもあります。

ではトマトケチャップはどうでしょうか? 原材料がトマトだからOKかと思いきや、こちらは意外にも好相性とはいきません。ケチャップには砂糖が多く使われているからです。トマトの酸味もほとんど感じられませんね。前回お話ししたように、砂糖はワインが持つ果実味を削いでしまいますので、ワインを飲むときはケチャップの使い過ぎに注意です。

日本の食卓に上がる惣菜のなかで、酸味の効いたものとしては「酢の物」があります。でも酢の物は食前に少し食べて食欲をかきたてるためのもので、あれで白い御飯をかきこむという料理ではないですね。また会席料理では「止め肴」(とめざかな)といって、いわゆるメイン料理の後に口直しとして酢の物が出たりしますが、こちらはコースの終わりの方で、いずれも食事の端っこです。食中で意図的に酸味をつける惣菜といえば、酢豚くらいなものでしょうか。

「酸味」を意識すると生まれる「一体感」

では酸味がどれほどワインとフードの相性に関わっているかを実際に確かめてみましょう。細長い俵型のおせんべいに海苔を巻いた醤油(タレ)味の「品川巻」というあられがあります。それと、同じ品川巻ですが梅の風味も加えた「梅のり巻」。今回はこの2種類のあられを使います。ワインはイタリア産のキアンティ(Chianti)を探してみてください。前回のチリ産シャルドネより少し高いですが800円台からあるでしょう。スーパーならまず置いていますし、コンビニも大手3社のいずれかには並んでいます。3点で1300円ぐらいだと思います。

はじめに品川巻を食べましょう。外側のタレ部分の砂糖が強い場合もあるので、よく噛み砕いて中のせんべい生地とタレを混ぜ合わせて下さい。そしてキアンティを口に含みましょう。醤油の香ばしい味とワインの風味が重なるようで悪くはないな……そんな感じでしょうか。

今度は梅のり巻を食べてキアンティを含みましょう。いかがでしょうか? 梅のほのかな酸味とワインの酸味が絡み合って、普通の品川巻より口中の一体感が高まったように感じませんか?

フランス料理にはソースがつきものですが、料理とワインのマリア―ジュを探るとき、「ソースの酸味とワインの酸味を合わせる」と言います。互いの酸の質が寄り添うようにすると、より相性のいい組み合わせに近づくのです。これをプチ体験してもらいました。

これから、ワインを飲むときは「酸味」をちょっと意識してみてください。コンビニで買った惣菜やサラダに、酢やレモンなどで酸味を少し加えるだけで、いつものおかずがワインに合う一品に変化する場合が多々あります。小さな容器に入った100%のレモン果汁も売られていますから、そんなものを冷蔵庫に常備しておくのもおすすめですよ。

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芝浦工業大学工業化学科卒。人工サファイア製造メーカーに勤務時のフランス出張でワインに目覚め、29歳で転身。2000年に銀座に「わいん厨房たるたる」を開業。オーナーソムリエ兼シェフ。趣味はワインのブラインドテイスティング(利き酒)。 共著本に「男と女のワイン術」(日経プレミアシリーズ新書)
出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
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