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養親になりたい方へ

研修で理解を深め、成長していく養親の姿に感動。

ベアホープ理事

橋田じゅんさん

特別養子縁組制度のいわば最前線に立って、新しい家族の伴走者として日々活動している民間の養子縁組あっせん事業者は、全国に22カ所(2020年12月現在)あります。一般社団法人ベアホープで、養親希望者の窓口となっているのが、理事の橋田じゅんさん。養親になるまでに必要な研修や求められること、養子縁組を検討している人に伝えたいことなどをインタビューしました。

養親に寄り添う存在として、専門職をサポート

私たちの事業で一番大きいのが特別養子縁組のあっせんですが、養子縁組を安易に勧めることはせず、産みのお母さんやこどもにとって最も幸せな方法を考えています。縁組前の面談やマッチング、養育トレーニングや、縁組成立後はこどもが16歳になるまでのフォローアップも行っています。産みのお母さんについても、こどもを託した後に長期的なフォローを続けることが大切だと考えています。

ベアホープの強みは「専門性」が挙げられます。私を含む事務職と共に、チームを組んで支援を行っている職員は全員が社会福祉士、助産師、保健師、公認心理師、栄養士などの資格を持っており、それぞれの知識や経験を生かしつつ、ケースに合わせて専門性の高い支援を行うことが可能です。

ベアホープは2013年に設立され、これまで137件の特別養子縁組が成立しており、34組が家庭裁判所に申し立てを行って審判中です。2015年からは、官民連携による特別養子縁組事業に取り組み、横須賀市児童相談所と連携してプロジェクトを実施、2017年からは長野県、福岡県の乳児院や母子生活支援施設での妊娠葛藤相談事業のコンサルティングを行うなど、専門性を生かした連携も進んでいます。

思わぬ妊娠に悩む人からの相談が増えているという

私はケースワーカーと一緒に仕事をすることが多く、育ての親になりたいと考えておられる方からの最初の問い合わせを受けています。養親とは縁組成立後も交流しており、大きくなったこどもから話を聞くこともあります。私自身はケースワーカーではありませんが、養親の方々に寄り添う存在として、言いにくいことも話していただけるように努めています。

問い合わせはホームページのフォームから送られるメールが最も多く、養親に関する内容は1日4、5件ほどあります。養親を希望される方の年齢は幅広いですが、団体の多くが養親の要件を45歳ぐらいとしているせいか、44歳や45歳の方が多い印象があります。私たちの団体では、長期的な養育を考えると、こどもと養親の年齢差が45歳ぐらいまでがぎりぎりであろうという考えなので、迎えるこどもが幼児や年長児であれば、45歳以上であってもこどもをお迎えいただけます。ただ、あまりに年齢層が高い方ばかりだと、これから産まれてくるこどもを託す相手がなくなってしまいますので、20代30代のご夫婦が将来の家族計画を考えるときに、不妊であってもなくても、特別養子縁組でこどもを迎え入れるという選択肢をぜひ入れていただきたいと考えています。

「養親候補者からの相談をケースワーカーと共有するのが大事」という

問い合わせの中には「こどもを選べますか」「新生児じゃないとイヤです」というものもあります。特に「障がいを持ったこどもを迎え入れることもありますか」という質問は多いです。しかし、すごいなと思うのは、当初はそういうことを言っていた方でも、私たちの話を聞くうちにこどもについての理解を深めて、養親になろうという決断をする方が多いことです。養親候補者の皆さんの、臨機応変に頭を切り替えてこどもを受け入れていく順応性は、本当に尊敬に値します。養子縁組の道に進むかについてジャッジするのは私たちであるかのように見えますが、最終的には皆さんがご自身で選択されているのです。

沐浴の実習もリモートで実現

養親を希望される方にはご夫婦で法定研修を受けていただき、家庭訪問や審査を経て約半年で待機家庭に登録されます。法定研修は座学が2日間、動画研修が1日間、実習が3日間あり、2020年はコロナ禍の影響もあり、実習を含めて全てリモートで行っています。

たとえば沐浴(もくよく)の実習では、赤ちゃんの人形をご自宅にお送りして、スマホのカメラで撮影してもらいながら、こちらで助産師がアドバイスを送るような形で実施しています。コロナ禍によって対面の実習が難しい中でも、家庭を必要としているこどもたちはいます。支援が途切れないようにするにはどうすべきかと考え、自治体にも報告の上、緊急的な対応としてリモートでの実習を実現することができました。

養親研修で皆さんに喜んでいただいているのが、特別養子縁組の“先輩”であるご家族に会えて、私たちに聞けないような話も直接聞けるという点です。養親登録を考えられている方にとっては、一歩を踏み出すきっかけになったと感じています。ベアホープで特別養子縁組をされたご家族で「がんばれベアーズ」というグループをつくり、コロナ禍の前はピクニックやクリスマスイベントなどさまざまな交流をしていました。現在はリモートでの集まりですが、遠方に住む方も参加され、養子縁組をされた家族のご自宅の様子が伝わるのは、リモートで良くなった点ですね。

「どんなこどもに自分の家庭を提供できるか」を見せてほしい

養親になるご夫婦に意識していただきたいのは、「自分たちがどんなこどもが欲しいか」ではなく、「どんなこどもに自分の家庭を提供できるか」です。特別養子縁組はあくまでもこどもの福祉のための制度であることを、念頭に置いていただきたいと思います。

ベアホープでは養親の家族向けに子育て支援講座も開設している

日本では、不妊治療から転換して特別養子縁組を考える方が多く、それは制度を知っていただく良いきっかけだと思います。ただし、養子縁組は自分でこどもを産むことの代わりではありません。精神的な痛みを乗り越え、養子を迎えようと心を切り替えていただくためにも、研修を受けたり私たちに相談していただいたりすることは大切です。

もちろん、こどもが幸せになるためには、親が幸せであることも必要です。こどもを大切に育てていても、親同士の仲が悪い家庭では困ります。だから私たちは、夫婦関係についてのカウンセリングや、栄養士による夫婦への食事指導などにも力を入れています。

また、私たちに自分の強みだけでなく、「こういうことで困っている」といった弱い面も教えてほしいと、養親希望者の方々には伝えています。落とすために審査を行っているわけではないので、強みも弱みも全て話していただきたい。それを恥ずかしいと思わずに自己開示していただくことで、幸せなマッチングや団体との信頼関係に基づくアフターフォローができるのだと思います。

「不妊でなければこの子と出会えなかった」という女性

ある養親の方は「私はこの子と会うために不妊だったのだと思う。不妊でなければこの子に会えなかった」と言っておられました。不妊治療された方の多くは苦しみを抱えて、養子縁組への転換も一筋縄ではいかないのが当然です。こどもとの出会いを奇跡のように感じて受け入れてくださることは、私たちにとっては感謝の言葉しかありません。

「私を必要としてくれるのであれば、と養親を希望する人もいます」と話す

養親になるか迷われている方は、研修を受けていただくことをお勧めします。私たちと話すことで、漠然とした不安が明確なものになったり、解決の助けになったりするかもしれません。近年の法改正で特別養子縁組制度も変わっていますので、最新の情報を得ることもできます。興味を持たれた方は、ぜひお問い合わせください。

研修を受けてみて「自分には向いていない」と断念される方もおられます。それはそれで、良いことだと私は思います。特別養子縁組について理解する方が増えることで、社会全体の意識も少しずつ変わっていくはずです。「全てのこどもが愛ある家庭で育つ」というのが、私たちの究極の目標。学校の授業や教員養成の過程でも、普通に特別養子縁組について教えるような社会になってほしいですね。

PROFILE
橋田 じゅん(はしだ・じゅん)/一般社団法人ベアホープ理事。3児の母として、こどもへのサインランゲージ「おててサイン」をNPO法人EBS協会で学ぶ。その後、講師となって活動するかたわら、2015年からベアホープで勤務。ケースワーク事務として養親や家族のケアなどを担当している。
一般社団法人ベアホープ[URL]https://barehope.org/
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