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養親になりたい方へ

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特別養子縁組制度で築く、新しい家族のかたち

久保田智子さん、鈴木博人さん

さまざまな事情で生みの親が育てることができないこどもを自分のこどもとして迎える、特別養子縁組制度。言葉としては知っていても、制度そのものや手続き方法等については詳しく知らないという方もいらっしゃるかと思います。特別養子縁組制度について、家族法を専門とする中央大学の鈴木博人教授と、2019年に同制度で女の子を迎えたTBS報道局記者の久保田智子さんにお話を聞きました。

特別養子縁組は、生みの親との法的な親子関係を解消し、育ての親が親権者になる制度

――久保田さんは、2019年に特別養子縁組で生後間もない女の子を家族に迎えました。特別養子縁組制度をどのような形で知ったのでしょうか。

久保田:もともと、こどもを育てたいという気持ちはありました。でも20代前半で、自分はこどもを産むのが難しい身体だと知って……。それからはずっと、どんな家族を持ちたいのか考えてきました。結婚して夫婦二人で仲良く暮らすのもいいし、結婚しないって選択肢もある。それなら、将来お友達と楽しく暮らすのもいいかもしれない。いろいろ考えてはみたものの、自分が産めないからこそ、こどもを持つことへの多少の執着があったのだと思います。

そんなときに目にしたのが、特別養子縁組制度で男の子を迎えた家族のドキュメンタリー番組です。「特別養子縁組」という言葉は知っていましたが、実際の家族の暮らしを見たことで、「これも自分が選べる選択肢の一つなんだ」とリアリティーを持って感じられました。こうして私が顔を出してオープンに話をしているのも、そうすることで他の人の選択肢の一つになれたらいいなと思ってのことです。

――特別養子縁組制度とはどのような制度か、教えてください。

鈴木:養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組がありますが、どちらも法律上、養子(養子縁組により子となる者)が養親(育ての親)の嫡出子(婚姻している夫婦の間に生まれた子)になる制度です。養親が親権者になるというわけですね。このうち、こどもと実親(生みの親)との法律上の親子関係を解消するのが特別養子縁組です。実親との間では相続権も扶養義務も相互になくなります。

普通養子縁組と特別養子縁組では、続柄や父母欄において戸籍の記載が異なります。普通養子縁組の場合は、養子と表記され、実親の名前も記載されますが、特別養子縁組の場合は、長女、長男などと記載されます。

普通養子縁組は養親と養子の契約によって成立しますが、特別養子縁組は「父母による監護が著しく困難又は不適当であること」などの事情がある場合、家庭裁判所が審判で決定するのも大きな違いです。そのほか、特別養子縁組は原則として離縁(親子関係の解消)できないけれど、普通養子縁組は離縁できます。養子となる子の年齢でいうと、特別養子縁組は原則15歳未満である必要があります。

さまざまな事情で実親の元で暮らせないこどもを養育する制度として里親制度もありますが、里親とこどもに法律上の親子関係はなく、親権者は実親です。

特別養子縁組を考えている方は、児童相談所や民間のあっせん事業者に相談を

――特別養子縁組でこどもを迎えたいと考えたとき、まずは何から始めましたか。

久保田:私の場合、自分にこどもができないという話を友達にもしたことがなかったし、当時は制度についてなんとなく人には相談しにくかったです。だから最初はインターネットで情報を集めていきました。

鈴木:特別養子縁組でこどもを迎えるには、まずは児童相談所(児相)や民間の養子縁組あっせん事業者に相談し、登録をすることになります。両方に登録も可能です。事業者は研修や登録などに費用がかかります。久保田さんの場合は民間の事業者ですか?

久保田:私は民間の事業者に登録しました。そこでとてもいい相談員の方と出会えました。もし民間の事業者を選ぶなら、いろいろな事業者が集まるシンポジウムなどにできるだけ参加して、直接話を聞いた方がいいと思います。委託を受けた後にもどのくらいの距離感でサポートをしてくれるか、生みの母側へのケアはどうしているかなど、事業者によってカラーが違うので、自分に合ったところを見つけるのが大事です。委託件数の多さも、それだけ経験が豊富だという一つの目安になると思います。

夫には、結婚の話が出たときに特別養子縁組を選択肢の一つとして考えていると伝えていました。夫婦で説明会や研修に参加して話を聞き、普通養子縁組との違いといった基本的なことからだんだんと理解を深めていきました。迎える子の性別の希望は言えない、といったことも当初は知りませんでした。

鈴木:特別養子縁組は、こどもの福祉の増進を図るための制度ですからね。

久保田:そうなんですよね。研修を受講してその視点を強く持つようになりました。

研修では第三者が進行役になってくれるので、「どうしてこどもが必要なんですか? いなくても二人は幸せですよね?」「育てにくい子だったりすることもある。それでも大丈夫ですか?」などと問われることで、夫婦二人だけの会話では生まれてこないような具体的なところまで考える良い機会になりました。

夫婦二人だけでなく、親戚も含めた“大きな家族”で娘を迎えた

――委託を受けるまでに、どんなプロセスがありましたか?

久保田:私が委託を受けた事業者では、育ての親としての登録に向け6日間の研修がありました。研修を終えてから少しして、娘の委託のお話を受けました。委託が決まってからは、泊まり込みの研修を受けました。これは、生後間もない赤ちゃんを養育するための研修です。娘と暮らすようになってしばらくしてから、家庭裁判所に特別養子縁組の申し立てをして、それが成立して、今に至ります。

鈴木:家庭裁判所は6カ月以上の養育状況を見て、特別養子縁組の成立を判断します。久保田さんも、家庭裁判所の調査官の面談を受けましたか?

久保田:受けました。経済状況や、「真実告知(※)はどうしますか」といったことについて、いろいろと聞かれました。その前に民間の事業者に登録したときにも自宅をお見せしたり、収入証明書などをお渡ししたりしました。
※ 養子であることをこどもに対して伝えること。こどもの状況をみて、こどもの年齢に応じた言葉で行う。大事な家族として迎えられたことを伝えることも大切。

鈴木:こどもを養育できる環境か、家庭裁判所の調査官は見ています。ちなみに特別養子縁組を行えるのは夫婦だけで、夫婦のどちらかが25歳以上(もう1人は20歳以上)であることが条件の一つであり、年間500~700件ほど成立しています。

――委託を受けるまでの間、ご夫婦でどんな話をしたのでしょうか。

久保田:夫婦ではもちろん、相談員の方からの強い勧めもあって、親戚とよく話をしました。親にはこどもを迎えると既に伝えてあったのですが、夫のお兄さん家族とも、「何かあったら、力を借りることもあると思います」と、話をしました。すごく前向きに話を聞いてくれて、甥っ子も「いとこができるんだ!」と喜んでくれました。私たち夫婦二人だけじゃなくて、大きな家族としてみんなでこどもを受け入れましょうというスタートラインに一緒に立てたのは大きかったです。

真実告知は、こどもが小さいうちから少しずつ行ってきた

――先ほど真実告知のお話が出ましたが、久保田さんはお子さんにどのように真実告知をしていますか?

久保田:いま娘は5歳ですが、娘が2歳半ぐらいから少しずつ生みの母の話をしてきました。まずは「そういう人がいるんだよ」ってところからですね。最近は、生みの母の写真も入れた、娘のこれまでの歩みについての絵本を作りました。それを見せながら、「ここで生まれたんだよ」「生みの母も、とってもかわいいって言ってたんだって」と、私が知るすべてのことをなるべく自然な形で伝えています。

こどものためにも、やっぱり生みの親に関する情報はなるべく多い方がいいですね。事業者の中でも、生みの親の情報をどれだけ持っているか、どれくらい生みの親とつながっているかが異なります。

私は娘の生みの母に一度だけお会いしているのですが、その時の様子はすべてメモしてありますし、預かったへその緒もしっかり保管しています。申し立てをした際の家庭裁判所の記録も5年で廃棄されてしまうので、すべてコピーして保存しました。そういった一つひとつのものが、こどもにとってもすごく大切になるのではないかと思っています。

鈴木: こどもがいつ自分のルーツを知りたくなるかはわかりません。それは養親が亡くなった後かもしれない。生みの親側は、特別養子縁組が成立すると法律上親子関係はなくなりますが、生んだこと自体は変わらないのです。だから児童相談所でも民間の事業者でも、本来なら生みの親側をどうサポートするかも含めて、つながりはずっと大切なんです。海外では、こどもが16歳になったら実親の情報を請求できる、などと規定がある国もあります。

特別養子縁組制度で、人生は大きく変わった

――お子さんを迎えて5年。現在のご家族の関係性はいかがですか?

久保田:“当たり前”に家族になったわけではない分、関係性は特に意識して生活してきました。本来どんな家族も当たり前ではないと思うんですけど、うちは特に、縁があってたまたま集まった3人に、どんな絆ができていくのか。ちゃんと話をしようとか、話を聞こうとか、そういったことを一つひとつ積み重ねる意識が強いと思います。

結局、こどもをそのままで受け入れるということだと思うんです。どんなこどももいろいろな特性を持っているものですよね。それをちゃんと受け入れる。私も、娘の背景を含めて自然と受け入れている感覚です。家族もいろいろな人たちの集合体で、それぞれ個性がある。特別養子縁組という選択も含めて、それぞれの家族像をお互いに認め合えればいいなと思います。

――改めて、特別養子縁組制度について今どんな思いを抱いていますか?

久保田:結婚してこどもを産んで育てるのが家族だ、という選択肢しか知らなかったら、私は家族を持つことはできませんでした。この制度のおかげで、私たち夫婦の人生は大きく変わりました。生みの親側にとっても、前向きな一歩を踏み出すための制度になってくれたらいいなと心から思っています。

もう一つ、特別養子縁組をしてみて、こどもたちはみんな幸せになってほしいという意識が強くなりました。娘とはご縁があって出会えましたが、もしタイミングが違ったら娘は違う家族の元へ行っていたかもしれない。そう思うと、生まれてきたこどもは、どこにいても幸せになれる。そのような社会になるといいと感じます。

鈴木:そうですね。特別養子縁組は、こどもがいない夫婦のための制度ではないので、こどもがいる家庭で受け入れてもいいわけです。そういったことも含めて、もっと広く知られていくといいですね。

その他、特別養子縁組制度の詳細については、以下もご覧ください。
特別養子縁組制度を知る|こどもを育てたいと願う人へ 特別養子縁組制度|朝日新聞telling, (asahi.com)

PROFILE
久保田智子(くぼた・ともこ)1977年生まれ、広島県出身。東京外国語大学卒業後、2000年TBSに入社。アナウンサーとして『どうぶつ奇想天外!』『筑紫哲也 NEWS 23』『報道特集』などを担当する。15年に結婚後、夫の転勤に伴い退社して渡米、コロンビア大学大学院にて修士号を取得。帰国後、19年に特別養子縁組で長女を迎える。20年に報道記者としてTBSに復職した。初監督作品となるドキュメンタリー映画「私の家族」は、3月15日から全国で順次公開予定。
PROFILE
鈴木博人(すずき・ひろひと)中央大学法学部教授。家族法、児童福祉法が専門。養子制度・里親制度に関する著書として、『親子福祉法の比較法的研究Ⅰ——養子法の研究』(中央大学出版部2014年)、『養子制度の国際比較』(編著、明石書店2020年)、『親子福祉法の比較法的研究Ⅱ——里親の法的地位に関する日独比較研究』(中央大学出版部2024年)等。
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