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養親になりたい方へ

制度に興味がある! 
でもこんなお悩み、ないですか?
夫婦で話し合いたいけど、うまくいかない。どうすればいい?

夫婦で特別養子縁組を考えていくために
話し合うときの5つのポイント

池田麻里奈さん

池田麻里奈さん
「産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ」(KADOKAWA) /回里純子撮影

特別養子縁組に関心を持ち、夫婦でこどもを迎える決意をするまでには、お互いの丁寧な意思統一が必要です。双方が抱える迷いや葛藤に、夫婦で向き合っていくことがとても重要となります。

今回、養親当事者でカウンセラーの池田麻里奈さんにお話をうかがい、池田さんの体験をもとに、夫婦でともに特別養子縁組を考えていくうえでのポイントを探ります。

池田麻里奈さん、紀行さん夫妻が特別養子縁組で長男を迎え入れるまでの道のりはこちら>>

「特別養子縁組でこどもを迎えたい」 一歩を踏み出すまでの夫婦の対話

約10年にわたる不妊治療を経て、2019年に特別養子縁組でこどもを迎えた池田麻里奈さん。現在は、5歳になる息子さんの子育て真っ只中です。

池田さんは不妊治療をしていた35歳のとき、「養子は考えていないのですか?」と尋ねられたことを機に、特別養子縁組に関心を持つようになりました。最初に特別養子縁組という選択肢について話をしたとき、夫は「40歳までは不妊治療をがんばろうよ」という言葉でやんわりとかわしたそうです。

後に夫は、夫婦の共著『産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ』(KADOKAWA)のなかで、血のつながらない子を育てる怖さと自信のなさから、特別養子縁組の話が出るたびにはぐらかしてきたと回想しています。

池田さんは42歳のときに持病で子宮全摘手術を受けましたが、手術後、「特別養子縁組でこどもを迎えることを一緒に考えてほしい」と綴った手紙を夫に渡します。その手紙には、親になる夢を抱き続けてきたこと、これからもその思いは変わらず根底にあることが書かれていました。そこから二人は養子縁組に向けて動き始めました。

池田麻里奈さん

そもそも、特別養子縁組でこどもを迎えるにあたり、夫婦の対話はなぜ大切なのでしょうか。

「万が一、夫婦の気持ちがずれたまま、特別養子縁組の手続きが進んでしまったとします。いざこどもを迎える段階になって、本当はそんなつもりはなかったとか、迎えた後に『あなたが迎えたんでしょう』と責任を押し付けてしまうと、こどもにとって環境の悪い家庭となってしまう」と池田さんは話します。

特別養子縁組でこどもを迎え入れるというのは、それだけ大きな責任を背負うもの。夫婦が遠慮なく、本音で意見を交わし、お互いが納得しながら話を進めていくことが重要です。

池田さんは「夫婦が本音で話し合った末に、特別養子縁組を選択せず、例えば不妊治療を続けても良いですし、2人の人生を選んでも良い」と続けます。「こどもを迎えても迎えなくても、心の言葉で伝え合った経験は、夫婦のこれからの生活にいい影響を与えてくれるはずです」

夫婦で話し合う際のポイント

池田麻里奈さん

特別養子縁組を検討するとき、まず夫婦の一方が関心を持ち、もう一方に相談して、お互いが納得したうえでこどもを迎え入れる準備に入るのが一般的です。しかし、どちらかに関心がない場合、そもそも話が進まないこともあります。

いくら夫婦として時間を共有してきたとはいえ、特別養子縁組の検討をパートナーに何度も提案するのは勇気がいるもの。池田さんに、夫婦で特別養子縁組について話をするときの5つのポイントを挙げていただきました。

ポイント1.「自己理解」を深める

まだまだ日本ではマイノリティな選択肢であるなか、なぜ“あえて”特別養子縁組を選択してまでこどもを育てたいのか。「なぜ?」を繰り返し自分に問いかけて、自己理解を深めます。

大前提として、特別養子縁組制度は、生みの親のもとで暮らせないこどもが安定した家庭を得るための“こどものための制度”です。「普通の家庭になりたいからこどもが欲しい」や「周りのみんながこどもを育てているから自分も育てたい」といった普通への憧れや、周囲やみんなが軸になっている場合は、さらにそこから掘り下げて自分だけの理由を見つけてみてください。

自分がどんな思いを抱えているのか自問自答を繰り返すことで、この制度をちゃんと理解できているか、「特別養子縁組家庭になるんだ」という覚悟があるか、明確になっていくのです。親と暮らせない子にどんなことができるのか、考えることも必要です。

ポイント2.自分の思いを相手に「伝える」

次に「自己理解」で整理した自分の思いをパートナーに伝えます。ここで大事なのは、「説得する」とか「理解してもらう」ではなく、ただただ「伝える」こと。

池田さんの場合、二度の流産や死産を経験しながら、長い間自身の思いと向き合ってきました。こどもを授からないつらさや悲しみ、それでも自分のなかに残った「親になりたい」という思い。そして夫に、「あなたが仕事で夢を叶えていくことはとても嬉しいし応援しているし、これからも応援する。そして私の夢はこどもを育てる、ということなんだ」と、これまで抱いてきた思いを素直に夫に伝えました。

夫婦で日々一緒に暮らしていても、相手がどんな思いで暮らしているかは、意外と分からないものです。言わなくても分かるはず、は夫婦の温度差を生んでしまいます。「そんな思いで生きていたのか」と、まずは相手に知ってもらうこと。そのためにも自己理解を通して自身の本音を見つめ、誠心誠意「伝える」ことが大事だといいます。

ポイント3.伝えた思いに対し「どう感じた?」と聞いてみる

自分の思いを伝えたら、それに対してどんなふうに感じたか聞いてみてください。伝えられた相手が、すぐに思いを整理することが難しい場合は、時間を置いてもいいのです。どう感じたのか聞いて、そこでまた自分もどう感じたかを返していく。まさに対話です。

どちらかの意見に塗り替えようとしたり、結論を急いだりせずに、夫婦のこれから、家族のこれからを話す、という意識で対話するプロセスを大事にしてください。

ポイント4.相手の「話を聞く体制」をととのえる

さらに、話をする際の環境づくりにも少し意識を向けてみてください。池田さん夫妻の場合、仕事のアポを取るように「今週末レストランで話したいことがあるんだけど」などと時間を確保してもらう方法が向いていました。スマホをいじりながらやテレビを見ながらなどでは、話はなかなか進みません。相手にも話を聞く心構えをしてもらいましょう。

真剣に伝えるのは緊張します。そんなときは、「うまく伝えられるか分からないけれど、あなたは自分にとって大事な人だからこそ、気持ちを知っておいてほしい」などと、自身の素直な気持ちを前置きするのもポイント。伝える不安も断られる怖さも、言いづらい気持ちも、自分の言葉でそのまま相手に伝えるといいです。

ポイント5.外部イベントなどの機会も借りる

自分だけの力で、特別養子縁組のすべてを説明するのは大変です。そんなときは、外部イベントなどの助けを借りるのもいいでしょう。池田さん夫妻は養子の日(4月4日)に開催されるイベントや養子縁組がテーマになっている映画に一緒にでかけました。帰りにごはんを食べながら感想を伝え合うのも、貴重な時間です。

さらに養子縁組に関するイベントには、当事者や専門家の話を聞く機会があったり、似た境遇の夫婦が多く参加したりしているのも、養子縁組を「自分ごと」として考えるきっかけになるのではといいます。

こどもを迎えてからも夫婦の対話は続く

池田麻里奈さん
「今年の春、5歳の息子がスキーデビューしました」(池田さん談)

特別養子縁組制度でこどもを迎え入れることは、ゴールではありません。夫婦がそろって決断し、縁あってこどもの迎え入れが決まったら、そこからは新たな生活のスタートです。

子育ての方針や家事育児の分担など、新しい分野の話し合いが次々に発生します。そのときも、基本はこどもを迎え入れる前に重ねてきた夫婦の対話で思いを伝えます。池田さんの場合、特に真実告知においては、どの程度まで伝えるか、どこまで具体的な話をするか、二人の足並みをそろえるためにもよく話をしているそうです。

「今は夫婦で『私たちが本当に望んで君と出会ったんだよ』と、常に常に、伝えています」

さらには、愛していることを形にも残しておきたいと考え、「抱っこアルバム」なるものを作り始めました。

「息子を迎えてから、いろんな人が会いに来てくれ、その全員と抱っこした写真を撮っているんです。だからそれをアルバムにしようと。妊娠期の写真やエコー写真というものがないので、いずれもしかしたら『みんなあるのに自分はない』と悲しく思うときがあるかもしれない。だけど、こんなにいっぱいの人たちが君を抱っこして私たち家族を祝福してくれたんだよ、とアルバムを見せて伝えたいなと思っています。ないものは仕方がないとして、私たちにできることを提案したら、夫が『それいいね!』と盛り上がってくれて、私もすごくうれしかったです」と、池田さんは笑顔で話します。

「夫婦がこどもに同じ熱量で愛を注いでいる、と自信を持って言えるので、それは本当に幸せなことですね」

PROFILE
池田 麻里奈(いけだ・まりな)/不妊ピア・カウンセラー。「コウノトリこころの相談室」主宰。30歳から10年以上、不妊治療に取り組む。人工授精、体外受精、2度の流産・死産を経験。42歳で子宮を全摘出し、特別養子縁組を決意。1年後、生後5日の息子を迎える。不妊・養子縁組相談のほかに、メディアや大学で「新しい家族のかたち」の講演活動を行う。夫婦のエッセイ『産めないけれど育てたい。不妊からの特別養子縁組へ』(KADOKAWA)を2020年に刊行。
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