telling, Diary ―私たちの心の中。

だまされたと思って痛覚を切ってごらん ―telling, Diary

telling,世代のライター、クリエイターたちが日々の思いや本音を綴る「telling, Diary」。今回は、IT企業の会社員・hacoさんのダイアリーです。「同世代のミレニアル女性から、悩みや迷いを打ち明けられることが多い」というhacoさん。今回は、「ネガティブ」と「ポジティブ」との付き合い方について、一つの考え方を書いてくれました。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

だまされたと思って、痛覚を切ってごらん

上司の心ない一言が許せない
謝って済む問題じゃない
緊張する、イライラする
~~は好きだけど~~は嫌い

 仕事をしているとこんなことを耳にすることはありませんか。
 これらの言葉は、感情と仕事を切り離せていないからこそポロリとこぼれてしまう言葉です。とはいえ、私たちはロボットではなく人間。誰でも感情を持っていますから、ある程度は仕方がありません。

 それに加えて女性はホルモンバランスの兼ね合いもありますから、工夫して感情の起伏と上手にお付き合いをする必要がありますよね。

「痛覚」を切る

 仕事を始めてすぐの頃、ある女性の先輩が、仕事に感情を持ち込みすぎていた私にアドバイスをくださいました。

 「だまされたと思って、一カ月でいいから痛覚を切ってごらん」。
 先輩が言っているのは、決して感情を捨てろということではありません。

 感情の中でも感謝、感激、感動などのポジティブな感情は、お互いが心地よく仕事をしていくためにはとても重要です。一方で、ネガティブな感情である怒り、悲観、嫉妬、執着などの心をネガティブな方に引きずる「痛覚」を仕事に持ち込まないようにすることで、もっと仕事がしやすくなるということでした。

 その先輩は、自立した女性で、まだまだ男性社会の第一線でもたおやかに立ち回り、働き続けている方でした。

 きっとこのアドバイスには、先輩がいままでたくさん損をしてきたことで学んだことも含まれているのでしょう。

仕事に感情は必要?

 それから私は、とにかくネガティブな感情のスイッチを切るように自分に言い聞かせました。最初こそ感情に流されてしまいがちでしたが、徐々にものごとの事実の部分と感情の部分を分けて考えられるようになったのです。

 例えば何か仕事で失敗をしてしまったとします。痛覚が切れていないと、失敗したことについて落ち込んだり、人のせいにしてしまう。起きてしまった事実を受け止めて、なぜそれが起きてしまったのか、今からその失敗を補うには何ができるか、というように考えられるのが痛覚を切っているときに頭の中を占めることです。

 感情はひとまず置いて、事実ベースで考えることできるようになればネクストアクションもより明確になっていきます。

プロの仕事をする、ということ

 例えるのであれば、クッキーの生地を型で切り取るようなイメージです。型で切り抜いたところが「事実」で、切り抜いたあとの型から余った生地は、その事実に基づく「感情」。余った生地は、「こちゃっと丸めて」しまえば良いのです。
 それができるならラクだけれど、と思う方もいるかもしれません。「こちゃっと丸める」のって、頭ではわかっていても難しい。でも、丸められないまま振り回されることのほうが怖い。その感情に振り回されるのってよくないな、と心の底から思えるようになったからこそ、感情をひとまず横に置くための努力をしよう、と考えられるようになったのだと思います。

 私自身、ネガティブな感情を仕事に持ち込まないようにする訓練には、2年ほどかかりましたが、このアドバイスのおかげで私はだいぶ仕事がしやすくなりました。

 仕事に振り回されること、職場の人間関係を気にしすぎること、失敗することが怖くなくなったのです。
 そのおかげか、前よりほんの少しだけ自分の能力を活かせるチャンスが増えた気がしています。

 仕事は、対価をいただく代わりに自分の能力や時間を提供するもの。
ビジネス関係にあり、プロとしてお金をいただく以上はネガティブな感情を持ち出すのは、ナンセンスだなと思えるようになったのです。

 軽やかに働き続けたいものですね。

渋谷で働く、ミレニアル世代の会社員。旦那さんと二人暮らしをしています。好きなことは文房具屋と本屋への寄り道。
東京生まれ東京育ち。羊毛フェルトを使ったイラスト、愛猫ゾロとダルタニヤンをモチーフとしたぞろだるシリーズなどに明け暮れる。oekaki creatorである。
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