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養親になりたい方へ

制度に向けて調べている 
でもこんなお悩み、ないですか?
どんな養子縁組あっせん事業者が自分に合うだろうか?

こどもの幸せを第一に家族を支援
養子当事者同士の交流も

環の会代表 星野寛美さん、養子当事者 今野幸菜さん

民間の養子縁組あっせん事業者は、特別養子縁組でこどもを迎える人たちとこどもをつなぎ、サポートする機関です。全国に24カ所(2023年4月現在)ある事業所には、それぞれの特色や、こどもと家族へのスタンスがあります。1991年設立の「環(わ)の会」では、「こどもの幸せを第一に考える」をモットーに、幼少期から日々の生活の中で、生みの親の存在を伝える「テリング(tell+ing)」や、特別養子縁組を行ったこども同士の交流の場などを大事にしてきました。環の会代表の星野寛美さんと、環の会を通じて家族に迎え入れられた養子当事者の今野幸菜さんに、お話を聞きました。

自然にルーツを伝える「テリング」を大事に 環の会代表の星野寛美さん

私たち環の会は1991年の設立から2023年末までの間で、414組の特別養子縁組を支援してきました。環の会の大きな特色は、生みの親との関係のつくり方にあると思います。育ての親がこどもを迎えるとき、そして迎え入れたあとも、生みの親と育ての親の交流が続くように支援を続けています。養子になったこどもとも、手紙などさまざまなかたちでつながりが続くようにしています。縁組の手続きが終了したら終わりではなく、生みの親、こども、育ての親のサポートを続けます。育ての親の方たちにも、いつでも気軽に相談できるようにすることを心がけています。

支援の根底には、「こどもの幸せを第一に考える」という思いがあります。こどもが自分のルーツを知ることができ、生んでくれたお母さんお父さん、育てているお母さんお父さん、みんながあなたの幸せを願っているのだということが伝わるように、生みの親との関係を断絶しないようにしたいのです。またこどもが生みの親のことを感じることができるよう、できる限りこどもの名前は生みの親につけてもらっています。

こどもに自分のルーツを伝えることをよく「真実告知」と呼びますが、環の会では「テリング」と呼んでいます。かしこまって「告知」するのではなく、幼いころから何げない日常のなかで話しかけていく。たとえば「あなたのふさふさの髪は、生んでくれたお母さんにそっくりね」とか、「可愛い手は(生みの)お母さんお父さんからもらったものだね」とか、こどもにわかりやすい言葉で伝えていくことを、育ての親のみなさんに提案しています。

特別養子縁組の事実をこどもに伏せようとする親もいると思いますが、伏せ続けるということは非常に大変なことです。エネルギーがいるし、いずれこどもにわかります。「伏せ続けることにエネルギーを使うくらいならば、こどもに率直に話しながら、育てるほうにエネルギーを使ってください」とお伝えしています。

また育ての親の方には、できればふたり以上のこどもを迎え入れてほしいともお伝えしています。養子である自分が家庭にひとりだけいるよりも、同じような境遇のきょうだいが一緒に暮らしていて、「うちの親ってこうだよね」などとこども同士で話し合え、思いを共有できるほうが、こどもにとっては安心できるのではないかと思うのです。やはり、こどもの育つ環境として何が大切なのかを考えています。

大切なのは夫婦のコミュニケーション

環の会への問い合わせから、こどもを実際に迎え入れるまではだいたい数カ月から1年ほどかかることが多いです。厚生労働省が定めている座学3日間、実習3日間の研修を行います。座学では、演習としてご夫婦の成育歴を振り返ることや、ご夫婦間でのコミュニケーションのあり方を確認することに重点を置いています。

どんな気持ちでこどもを迎え入れようとしているのか、ご夫婦ともにこどもを前向きな気持ちで迎え入れようとしているのか。たとえば不妊治療などを経た場合、どちらか片方が特別養子縁組に積極的で、片方が引っ張られているというケースがときどきあります。そうではなく、ご夫婦でしっかり話し合い、コミュニケーションが取れたうえでこどもを迎え入れてほしいのです。もちろん、そうではないからといって門前払いするようなことはありませんが、より向き合ってコミュニケーションが取れるよう、お話し合いを促すことなどはあります。ご夫婦の仲が良いことが、大切です。

そしてやはりこども中心で縁組を考えられるかどうかが大事です。老後の世話をしてほしいとか、お墓を継いでほしい、夫婦関係が良くないのでかすがいになってほしい、キャリアアップに集中していてこどもが持てなかったので、それを埋めるためにこどもがほしい……そういう動機での特別養子縁組ではなく、こどもはこども自身の人生を生きたいように生きるということを了解したうえで、こどもを迎えていただきたいと思います。

年数回開催している説明会は、環の会を通じて特別養子縁組をした先輩の育て親さんが運営して説明をしていますので、具体的な夫婦のイメージ、家族のイメージがしやすいのではないでしょうか。

迎え入れるこどもの年齢や性別、障害の有無などについても、選択していただくということはしていません。ただこれも希望されたからといっても、うちではお応えできませんというわけではなく、なぜそう思うに至ったのか、お話をまず聞くようにしています。

また環の会では、予期しない妊娠をした女性のサポートにも力を入れています。LINEやメール、電話での相談をすべて無料で受けつけるほか、相談があったからといってすぐさまこどもを託すようお勧めするようなことはしません。会のスタッフが女性に直接会って面談し、きちんと意思を確認し、育ての親にも会ってもらったうえでこどもを託してもらいます。

すべてはこどものためです。私たちはこどものすべてをまるごと受けとめてくれる育て親さんとのご縁を待っています。特別養子縁組は決して「特別」なことではなく、こどもに温かな家庭を用意することだと思っていただけたら幸いです。

環の会を通じて特別養子縁組で迎え入れられた今野幸菜さん

今野幸菜さん(右)と、育てのお母さん

同じ境遇のこども同士だから、話せることがある

私は生後8カ月で、いまの家に迎え入れられました。私の下に妹と弟がいて、みんな別の生みの親がいる、特別養子縁組のこどもです。弟はずっと生みの親と手紙などで交流していましたが、私と妹は幼いときにさまざまな事情で生みの親との交流が途絶えました。でも、環の会の事務局のみなさんや、なにより育ての親が自分たちのことをとても気にかけて大事にしてくれているというのを感じていたので、そのことをとてもうれしく感じながら育ったという記憶が大きいです。

環の会の育ての親たちが主催する説明会で同じ境遇のこどもたちと会って一緒に遊んでいたこともよく覚えていて、久しぶりに会うととても懐かしい気持ちになります。

それ以外にも、環の会では「Youth(ユース)の会」というこどもたちの集まりがあり、年4回ほどイベントを開いては集まっています。最初は「真面目な話もしよう」と集まるのですが、結局お互いの近況報告や友達の話などになってしまって(笑)。本当に普通の会話なのですが、それでも特別養子縁組当事者のこども同士だから話せること、わかり合えることがあると感じています。

直接会う年4回のイベント以外にオンラインの集まりもあり、昨年は8回実施しました。

いま、幸せに生きています

今野幸菜さん

おなじ立場のきょうだいがいたことも、私にとってはよかったです。こどもが3人ですから、なかなかそれぞれに個室をつくることは難しく、「私はずっと妹と相部屋で、弟はずるいな!」なんて思ったこともあったのですが、それは特別養子縁組家庭だからとかは関係なく、どこの家でもあることですよね。それよりもたとえば、私はやはり親戚や家族と顔が似ていないのですが、私と同じように似ていない顔をしたきょうだいたちがいることで、親戚で集まったときなどに疎外感を感じることがなかった。それはとても心強かったです。

自分が特別養子縁組で迎え入れられたこどもであることに引け目を感じたこともなく、小学生のころは自分で「私は養子なんだよ」と言いふらしていたくらいです。私の話を聞いた友達に「幸菜ちゃん可哀想」と言われたときも、「自分は可哀想なんだ」とショックを受けるよりも、「えっそう思うんだ!」とビックリしたという気持ちの方が大きかったです。
私には育てのお母さんお父さんだけでなく、生みのお母さんお父さんもいて、私のことを思ってくれる人がみんなの2倍いるんだ、そのように考えていました。

環の会のなかで見守られ育ってきて、会のみなさんに会うと「幸菜ちゃん大きくなったわねぇ」なんて声をかけてもらって。

まだまだ「養子って可哀想」と思う風潮があるのかもしれませんが、私はいまとても幸せに生きています。だから、私と同じように幸せな家庭を、小さなこどもたちにもプレゼントできるように、特別養子縁組という選択肢をぜひ考えてほしいと思っています。

PROFILE
ほしの・ひろみ/1961年、横浜生まれ。早稲田大学理工学部へ入学後、中絶問題などに関心を持ったことをきっかけに3年生のときに中退。横浜市立大学医学部へ入学。京都大学医学部付属病院、夏山病院、市立岸和田市民病院などを経て90年~93年、国立病院医療センター(現、国立国際医療センター病院)に勤務。診療のかたわら、91年に、ケースワーカーと共に、社会福祉事業「環の会」を創設(2000年にNPO法人化)した。
PROFILE
こんの・ゆきな/1997年生まれ。生後8カ月で育ての親の家庭に特別養子縁組で迎え入れられる。現在は会社員として働くかたわら、環の会のYouth(ユース)の会の主要メンバーとしてこども同士の交流や広報活動を行っている。
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