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養親になりたい方へ

自分たちに合った養子縁組あっせん事業者を選ぶには

特別養子縁組で、民間の養子縁組あっせん事業者(以下、事業者)からこどもを迎える場合、事業者をどのような視点で選べばいいのでしょうか。日本女子大学教授の林浩康さんと、養親としてこどもを迎えた2人の当事者に話を聞きました。参考にしたい映画や本についても、あわせて紹介します。

事業者と長くいい関係を築いていくために 日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科 林浩康教授に聞く

Q.1特別養子縁組を希望する夫婦は、どこに相談すればいいですか?
特別養子縁組でこどもを迎える場合、児童相談所を介して託されるケースと、事業者を介して託されるケースがあります。
児童相談所は全国に220カ所ありますが、居住地を管轄する児童相談所しか登録できません。最寄りの児童相談所や、情報を持っている行政機関に問い合わせることが最初の一歩となります。
都道府県などの許可を受けた事業者は、22団体あります(2022年1月現在)。特に管轄地域はなく、全国区で対応されています。サイトなどの情報や事業者に問い合わせた印象などから、夫婦が自分に合ったところを判断して、関係を築いていくことになります。
Q.2養親には年齢などの条件はありますか?
養親になるためには、法律上では夫婦のどちらかが25歳以上で、もう一方が20歳以上という条件があります。受託するこどもとの年齢差を考慮して、年齢の上限を40歳から50歳ぐらいに設定しているところも多くあります。
世帯の経済状況、住まいの状況、婚姻年数、成育歴など多様な観点から総合的に評価されることになります。何か持病をお持ちでも、養育に支障がないという診断書を提出すれば、一律に排除されることは少ないと思います。
林浩康教授
Q.3養子縁組成立までの金銭的な負担はどれぐらいですか?
児童相談所を介する場合は、金銭的な負担はなく、こどもを委託されてから特別養子縁組が成立するまでは、養子縁組里親として生活費等が支給されます。
事業者では、手数料や、研修・家庭訪問などに要する実費費用を請求されることが一般的です。トータルの金額は、数万円程度から100万~200万円かかるところまで、幅があるように思います。サイトで手数料を明確にしている事業者もあれば、掲載していないところもあります。事前に手数料などについて問い合わせて、それに対して納得できるかどうかは、事業者を選択するための重要な基準といえます。
Q.4児童相談所か事業者、どちらかを選ばなければならないのでしょうか?
むしろ、児童相談所、事業者のどちらも登録されている方が多くおられると思います。1機関あたりの平均成立件数は事業者が児童相談所より多くなっています。児童相談所の地域ごとでの特別養子縁組の成立件数は公開されていませんが、自治体によって差があります。ほかにも、こどもを受託するまでの待機期間だったり、こどもの年齢だったり、そういった口コミ情報などが最終的に児童相談所か事業者にするかの判断に大きな影響を及ぼしているのではないかと考えられます。
Q.5金銭面のほかに、事業者を選ぶポイントは何がありますか?
事業者のところまで出向いての面接や、対面での研修などを考えると、居住地からの地理的な距離感は判断材料の一つです。しかし、22の事業者のうち5つは東京に集中しており、近くにない地域の方が多いので、距離感だけでは判断できないのも確かです。
生みの親への丁寧な対応も、養親さんにとって判断材料となります。生みの親と育ての親が通信や贈り物などを通して交流を続ける「セミオープン・アダプション」を具体化している事業者もあります。
事業者のカラーを知るためには、ウェブの情報や発行しているニュースレターを読んだり、説明会などに出席している人の話を聞いたりした内容などが、判断材料になります。大きな要素となるのが、経営者の話を直接聞けるかどうか。実際に会って人間性などを主観で判断せざるをえない面もあり、最終的には相性や自分の感性を信頼することが大切だと思います。

離れた地域の事業者から縁組成立。妥協せずに納得できる選択を Aさん(関東地方在住・40代・女性)

夫婦とも授かり婚を望んでいたのですが、なかなか妊娠できず、40歳を過ぎてから高度不妊治療を受けるために結婚しました。それでも結果が出ず、私が43歳になる前に、特別養子縁組の道に進む決意をしました。

ネットでいろいろと調べて、まず現状を把握しようと、児童相談所の説明会に行きました。2020年の春、ちょうどコロナ禍がはじまった時期でした。その影響で、児童相談所でこどもを迎えるのに必要な里親認定を取得するまでには、約2年もかかるという厳しい現実を知らされました。

できるだけ早く特別養子縁組をしたいと思っていたので、事業者にしようと決めました。厚生労働省の資料に載っていた事業者をすべて調べてみると、里親認定がなくても大丈夫なところが約10事業者。問い合わせや資料請求をして、手数料が明確かつ家から比較的近い4事業者に絞り、説明会や研修会に参加しました。

ところが、考え方や条件が合わなかったりして、このままでは無理かなと諦めかけていました。そこに、以前に断られたある事業者の方から親身にアドバイスをいただき、最終的にご縁をいただいた事業者を薦められました。少し遠方にある事業者のため、条件から外していたのですが、研修会に参加することにしました。

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事業者を選ぶ際、私たちが条件に考えていたのは、(1)実績、理念と実際の比較、(2)信頼できそうか、(3)実母さんのケアをしているか、(4)委託後のサポート(養親やこども同士の交流も)、の4点でした。研修会では、事業者の代表や、養親の先輩の方々の話を聞く機会があり、すべてに納得することができました。なかでも一番の決め手は、代表の方の実直な人柄だったと思います。

20年8月に研修会、9月に面談や研修、家庭訪問などを経て、11月に養親として待機する段階に進みました。21年の1月に新生児の女の子を迎えて、10月に縁組が成立。スムーズに進むことができたのは、事業者など、さまざまな方に助けていただいたからです。

特別養子縁組の育児は、ある日突然はじまって、不安も多いもの。ほかの養親さんやご家族との横のつながりがあり、いつでも相談できる環境が心強かったです。エリアごとの定期的な交流会や勉強会を開催されていたり、実親さんとつながるサポートもしていただいたりして、ここにして本当に良かったなと思っています。

手数料に関しては、お世話になった事業者ではサイトに明記されています。その他にかかった実費も領収書のコピーをいただいて、トータルで90万円ほどでしたが、金額には納得しています。ただ、事業者への手数料の一部を補助してくれる自治体が多いのに対して、私たちの住む自治体には補助金がありません。地域によって3、40万円の格差があるのというのは今後の課題だと思います。全国平等になって、特別養子縁組が将来もっと浸透していってほしいです。

これから特別養子縁組を考えておられる方は、児童相談所や事業者のサイトを見るだけでなく、インスタグラムなどのSNSで情報収集するのも、有効な手段だと思います。養親さんとやりとりをしたり、アドバイスをいただいたりして、私もすごく参考になりました。

事業者選びはとても大切で、距離が近いか遠いかは関係ありませんでした。長くお付き合いすることを考えて、自分たちに合った信頼できるところを選ぶことが重要です。私も後悔はしたくなかったので、妥協しないで探し続けました。最終的に納得できた時は本当に安心して、こどもを迎える心の準備を整えることができました。

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実際に会って話すことが大切。養親経験者との交流で不安が解消された Bさん(関東地方在住・50代・女性)

特別養子縁組のことを初めて知ったのは20代のころ。たまたま雑誌の記事を読んで、こういう制度もあるのだな、くらいに思っていました。

30代になって不妊治療をはじめ、体外受精を10回近く繰り返していました。こどもを授からずに悩んだ末、私は産みたいのではなく、こどもを育てたいのだということに気づきました。そしてたどり着いたのは、偶然にも雑誌に載っていた養子縁組あっせん事業者でした。

20年以上も前の当時は、ネットで情報を探すのにも限界がありました。関東と関西でそれぞれ一つの事業者と、児童相談所で里親に登録する方法しか見つからず、関東の事業者の説明会に行くことにしました。

説明会では、事業者の方の話の後に、当事者である養親の方々と直接お話をする機会がありました。養親のみなさんはとても幸せそうにお子さんと参加されており、「子育ては大変だけど、養子だからといって特別に心配していることはない」というお話を聞いて、私も抱えていた不安が解消されました。

その後、面接、登録、研修とトントン拍子に進み、数カ月後にはこどもを迎える準備ができました。並行して児童相談所でも里親登録の手続きを進めていたのですが、里親登録の手続きを終える前には、長男を迎えて一緒に暮らしていたと記憶しています。2年後にも、同じ事業者から長女を迎えました。

2人のこどもは成長し、長男は成人式を迎えました。いまは私のときと比べて情報が入手しやすく、複数の事業者から選べるというのは、うらやましく感じます。それは逆に、選択肢が多くなり、決めるのが難しくなったともいえます。事業者ごとの違いは、実際に話を聞いてみないと分からないもの。コロナ禍で難しい状況とはいえ、実際に事業者の方と会って話を聞くことが大事です。

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私がこの事業者で養子を迎えたいと思った一番の理由は、養親さんとお話しできたからですが、事業者の代表やスタッフがどういう方かというのも大きかったです。実は、私が代表の方とお話しした第一印象は少し怖くて、「大人のあなたたちは少し我慢しなさい」という感じの強い調子で言われました。でも、後になって考えると、それはこどもの幸せを考えると非常に重要なことで、この人たちなら大丈夫だろうと安心できました。事業者の方々の人柄や信念は、とても大事な判断材料だと思います。

事業者に支払う料金も、金額に対しての見合った説明をしてくれるかを見極めた方がいいと思います。費用が発生するのは仕方がないのですが、事業者にはわかりやすくて納得できる説明をしてほしいですね。

もう1点挙げるとすれば、こどもを産んだ実親さんのことを大切に考えている事業者をお薦めしたいです。私たちも、生みのお母様とは何度かお会いしたり、事業者を介して手紙をずっとやり取りしたりしています。そういう関係を長く続けられることが、事業者を選ぶ理由の一つになると思っています。

私が社会に望むのは、不妊治療をはじめるという段階で、養子縁組も選択肢として提示されることです。人工授精や体外受精などと並んで、養子を迎えるという手段があるということを知っておくだけでも、悩んでいる夫婦にとって幸せな選択がしやすくなるのではないでしょうか。

特別養子縁組のことをもっと知るために ~おすすめの本・映画~

参考になる解説本や小説などについて、林浩康教授に紹介してもらいました。

(1)小説・映画

『朝が来る』(文藝春秋)

辻村深月さんによる社会派ミステリー小説で、テレビドラマ化もされ、2020年には河瀨直美監督が映画化。養親がこどもを受託するまでの心理的な葛藤や、生みの親の側の心の揺らぎなどが、フィクションでありながら臨場感を持って描かれています。

(2)体験談・事例集

『産めないけれど育てたい。 不妊からの特別養子縁組へ』(KADOKAWA)
不妊ピア(当事者)・カウンセラーの池田麻里奈さんと、紀行さん夫妻がそれぞれの視点から、不妊治療を経て特別養子縁組を決意するまでの葛藤や、子育てについて、素直な気持ちをつづったエッセー。

『真実告知事例集 新版 うちあける』(和泉出版)

こどもに養子であることや、生みの親のことを伝える「真実告知」について、どうすべきかを豊富な事例で説明しています。

(3)ガイドブック

『こどもの養子縁組ガイドブック 特別養子縁組・普通養子縁組の法律と手続き』(明石書店)

特別養子縁組・普通養子縁組の法律や手続き、戸籍上の表示、制度の問題点などについて、専門的な立場から詳しく解説しています。

『こどものいない夫婦のための養子縁組ガイド 制度の仕組みから真実告知まで』(明石書店)

養親となった母親が、当事者の目線で制度や手続き、情報収集、子育てなどについて解説。他の当事者の体験談なども掲載。

『産まなくても、育てられます 不妊治療を超えて、特別養子縁組へ』(講談社)

こどもを迎えた夫婦の体験談、特別養子縁組に必要な知識と手続きなど、「親」になるために知っておきたいことをまとめています。

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