ミス・ユニバース日本代表時代の思い出を語るモデルの神山まりあさん
モデル・神山まりあロングインタビュー04「理想のミスユニバース像ばかりを追いかけていた」

神山まりあ「理想のミスユニバース像ばかりを追いかけていた」

元ミス・ユニバース日本代表であり、現在、雑誌「VERY」をはじめモデルとして活躍している神山まりあさん。いつも自然体な印象の神山さんですが、実はその人生は、周囲の期待に応えようと倒れるほど自分を追い込んだり、海外での仕事で壮絶な孤独感やいじめを経験したりと、波瀾万丈そのもの。そんな神山さんに、自らの半生を語っていただきます。

●神山まりあロングインタビュー「理想のミスユニバース像ばかりを追いかけていた」04

 第4回は、2011年にミスユニバース日本代表に選ばれるまでの苦労話。ハワイで本当の自分を出せるようになった神山さんですが、再び苦しい時代を迎えてしまいます。

ハワイで就職する予定が一転、日本に戻ることに

 モデルの仕事を始めたのは、ミスユニバースに応募して受かってからです。

 大学3年のときにワーキングビザを取得してハワイで働き始め、そのまま向こうで就職活動をして、バイヤーとしてある企業に就職する予定だったんです。でも、いざ仕事に就こうと思ったら就職先の社長が失踪しちゃって。アルバイト先もやめちゃったし、新しい会社の就労ビザももらえない。それで結局、日本に戻ることになりました。

 日本に戻ってきたものの、日本での就職活動をまったくしていなかったから、大学を卒業しても何もすることがなかったんです。親も、高校生のときに勉強のことで私を追い詰めてしまったことがトラウマになったのか、就職に関しては何も言ってこないんです。でも、またそれがいやでいやで……。

 とにかく働くところを見つけなきゃと思って、アルバイト先として選んだのがアバクロでした。そして、そこで親友になった子が、ミスユニバースのその年のファイナリストだったんです。私の妹がミスユニバースのファンだったこともあり、なんとなく「あ、いいかも。ちょっとやってみるか」という、すっごく軽いノリで応募しました。

モデルの神山まりあさん

人とは違うことをしないと埋もれてしまう

 やるとなったら目標を決めて一直線。日本でのファイナルは15人いて、その中で勝たないとまた”プー太郎”生活に逆戻りなんですよ。常に背水の陣。まさに「崖っぷちまりあ」という感じでした(笑)。

 とにかく1番にならないと、何も残らずこの数年が消えてしまう。常に人とは違うこと、まわりの人よりも高いレベルを目指さなければいけないと思って、ちょっと目を引く何かを探していたんです。

 たとえば、ミスユニバースの選考では、365日朝昼晩、食べた食事の写真を撮って記録しなければいけないのですが、そのときも毎回テーブルコーディネートからしっかり準備して、お花を飾って、盛りつけにもこだわって、ということをやり続けました。さらに月2回、私服のコーディネートを写真で送るという課題があったんですが、それもプロのカメラマンに頼んで、ロケをして、白黒の写真を撮ってもらっていました。そこまでしなければいけないというわけではなかったんですが、人よりも目立つことをしないと埋もれてしまうと思っていました。

 体型に関しては、そのときはやせるということよりも、とにかく脂肪を筋肉に変えようとがんばりました。ミスユニバースの世界大会では、みんすごく背が高いし、体つきも良いから、すごく堂々として見えるんですよ。日本人は細くて小さくて、貧相に見えちゃうんです。

 男性のトレーナーにお腹を足で踏んでもらうトレーニングをして、とにかく筋肉をつけようとがんばりました(笑)。そのころは、がっちがちの筋肉体質でしたよ。食事もプロテインを取っていましたし。

モデルの神山まりあさん

自分の中のイメージに合わせようと必死で背伸びをしていた

 私の中で、ミスユニバースのイメージ像があって、日本代表になったからには、かっこよくないといけない。強くないといけない。つんけんしないといけない。強い=つんけんする、というイメージがあったんです(笑)。よくいえば「クールでいなきゃ」みたいな感じだったんですよね。

 目の周りはアイシャドウで真っ黒、まつ毛は3枚重ねづけ。自分の洋服の好みも性格もわからなくなってしまって。とにかく思い描いたユニバース像に追いつこうと必死で、そこに自分を合わせようとしてしまった。

 そのときは、決して充実していたとは言えないですね。今から考えると。

 自分がどんな服が好きなのか、本当はどんな性格かのかもわからなくなってきちゃって。あのときの自分は自分じゃなかった。勝つことしか考えていなかったんです。高校時代に逆戻り。でも、やめても何も残らないから、やめることもできない。猫をかぶって、自分の中のミスユニバース像を演じるしかない。

 せっかくアメリカに行って自分の殻を破ることができたのに、また高校時代のようにまわりの目を気にする自分に逆戻り。そんな時代でした。

 まわりの目を気にしてかっこつけてばかりの私が変わるきっかけになったのは、夫なんです。この話はまた次回話しますが、その前に1つお話を。

自然体が魅力のモデル・神山まりあさん

「おでこにシャワーキャップのあとをつけてた」なんて言えない

 ミスユニバースをやっていたから、よくインタビューで「美の秘訣」を聞かれるんですよ。それで「美とは」という感じで言っていたんですけれど、本当は恥ずかしくて、恥ずかしくて……(笑)。一回でも恥ずかしいと思ったら、もう何も話せなくなっちゃうと思って、ずっと「美とはですね!」と演じていたんですけれど……。でも、もうかっこつける必要はないかなって。

 今だから言えますが、実は私、学生時代にお弁当屋さんで働いていたことがあるんですよ。しかも、接客じゃなくて製造のほう。シャワーキャップをかぶってマスクして。家から近い商店街の一角にあるお弁当屋さん。お店のおばさんが親切だったこともあって、2年間くらいバイトしていました。

 お弁当屋さんのバイトは、楽しかったですよ。1日終わると、おでこにシャワーキャップのゴムのあとがついちゃってるんですよね(笑)。そんな感じだったのに「美とは!」なんて、恥ずかしくて言えない(笑)。

  • ●神山まりあさんプロフィール 
  • 2011ミス・ユニバース・ジャパングランプリ。 2015年に結婚、2016年に男児を出産。 雑誌「VERY」をはじめテレビ、ラジオ、イベントなどで活躍。
  • Instagram https://www.instagram.com/mariakamiyama/
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
フォトグラファー。コミュニティー『ママとベビの撮影会』を主宰。全国で撮影会を行い、家族写真を中心に”カタチノナイモノ”を写している。7年間で5000組以上の親子を撮影