家族で考える2020年冬ドラマ考察

前田敦子「伝説のお母さん」クズ夫と激闘「私だってまだ戦えるんだよ!」「母親のくせに何が冒険だよ!」【家族で考える2020年冬ドラマ考察04】

人気ライターが放送されたばかりのドラマを徹底解説。ドラマが支持される理由や人気の裏側を考察し、紹介してくれます。「家族で考える冬ドラマ」では、今年の冬ドラマで描かれる「家族」についてフィーチャーして考えていきます。今回は前回に引き続き、前田敦子さん主演の「伝説のお母さん」。無職なのにまったく家事と育児に協力しないクズ夫・モブ(玉置玲央)との関係性に変化のきざしが。

「まおうがふっかつした しかし ほいくしょがあいていない!」

ドラマでの家族の描かれ方には、その時代の家族像が反映される。表向きには「家族」をテーマに掲げていないドラマにだって「2020年の家族」の姿が映し出される。

かねもと原作、前田敦子主演のドラマ「伝説のお母さん」は、ファンタジーRPGの形を借りた子育てドラマ。かつて魔王を倒した伝説の魔法使いメイ(前田)が、復活した魔王討伐パーティーに参加しようとするが、ワンオペで子育て中の8か月の赤ちゃんを抱えて悪戦苦闘するという物語。

ファンタジーの衣を被ったワンオペ育児のリアルで過酷な描写に、放送開始直後から子育て中の母親、あるいは子育て経験のある母親から共感の声が殺到。なかでも、無職なのにまったく家事と育児に協力せず、「ウンチのオムツ替えんの、男にはハードル高えだろ?」と言い放ったメイのクズ夫・モブ(玉置玲央)には、すさまじいヒートが集中した。

現在、6話まで放送が終わったところ。はたして、その後のメイとモブはどうなったのだろうか?

いろいろな家族のかたち

2話、3話、4話では、メイとともに魔王討伐パーティーに参加した伝説の勇者・マサムネ(大東駿介)、伝説のシーフ(盗賊)・ベラ(MEGUMI)、伝説の戦士・ポコ(片山友希)と新加入した僧侶・クウカイ(前原瑞樹)のカップルの3組のそれぞれの家族のかたちが描かれた。

伝説の勇者・マサムネは冒険のさなかもダブルワークを欠かさないデキる男。その上、子育ても手を抜かない「イクメン」(この作品の中ではあえて使われている言葉)っぷり。

モブが何もしないため、子連れでパーティーに参加したメイに理解を示すものの、保育園へのお迎えを忘れて妻のリツ(松岡恵望子)にガチギレされ(戦いで死んでいたので行けなかった)、挙げ句の果てには「待機児童0」を目指して保育所を拡充する魔界に寝返ってしまった! 

伝説のシーフ・ベラは男だらけの会社で働く女(盗賊会社だけど)。女性初のプロジェクトリーダーを任されて張り切るが、シングルマザーのベラは8歳のひとり息子・ベル(林田悠作)をメイに預けることに。ベルは家事一切ができる子だったが、メイはそんなベルを「可哀想」だと言い、仕事に邁進するベラと衝突する。

「ウチにはうちの考えがあって、アイツを育ててるの、育ててきたの。今までずーっと」

メイは「子どもは子どもらしく」という考えに囚われていたが、ベラとベルは母子でお互いに支え合って生きてきた。「僕だって強いんだよ。僕はお母さんの子どもだから」と寂しさを押し殺して精一杯背伸びして答えるベルがいじらしい。2人の姿を見届けたメイがこうつぶやく。

「あの2人にはあの2人の関係があって、それはそれで、一つの形なのかもなぁ、って。なんか、うらやましいです」

4話では、伝説の戦士・ポコと僧侶・クウカイがなんと電撃婚約! しかし、子どもが欲しいクウカイと子どもがいらないポコは正面衝突してしまう。しかし、葛藤の末、和解する2人。それを見届けたメイは、こう言う。

「夫婦ってあれだよね。最初はわかりあえないことがあっても、だんだんこう、相手に寄り添ったりとか、そういう風にして変わっていくんだなぁ、って」

しかし、変わらない男がいた。モブだ。

「変わらないって何? 俺に変われって言いたいの?」

この男、手強い……。

モブの小さな小さな成長

女性は出産後、すぐに「母親」になるが、男性はなかなか「父親」になれない。そんな言われ方をすることがある。しかし、「伝説のお母さん」を観ていると、単に生物学的な話ではなく、積み重ねた「経験と対話」が大きく関わっているのではないかと思えてくる。

メイは魔王討伐のパーティーに参加し、さまざまな家族のかたちを目の当たりにしてきた。夫婦や子育てについての会話もベラやポコらと重ねている。一方、モブはほとんど引きこもって遊んでばかりで、誰とも家族についての対話をしていない。

圧巻だったのは、第6話の「魔王討伐パーティー選抜トーナメント」で対戦することになったメイとモブの口論(夫婦喧嘩)だ。メイの姿を見たモブは、驚きながらも「こいつ、棄権するそうです。いいよな?」と言い放つ。ひっどい。しかし、第1話ではモブに反論できなかったメイが、ここでは敢然と反論に出る。

「モブくん聞いて。私、冒険に行きたい。モブくん、ごめん。私、やっぱり戦いたい!」
「何言ってんだよ。は? 子どもどうすんだよ! 無理に決まってるだろ!」
「無理じゃないよ。モブくんが一緒に育ててくれれば無理じゃない」
「母親のくせに何が冒険だよ!」
「……母親が冒険に行っちゃいけないの?」
「……」
「私だってまだ戦えるんだよ! さっちゃん(赤ちゃんの名前)のせいにして諦めたくないの!」
「子育てどうすんだよ! 無責任だろ!」
「無責任なのはそっちだよ! 働いてもないのに、どうして家事も育児も分担できないの!」

モブの言い分は変わらないが、メイは明らかに強くなっている。劣勢のモブは「てかこいつ、ぜんぜん夫を立てないんですよ」と観客にアピールするが(最低だ……)、メイの「仕事ぐらい、さっさと見つけてきなさいよ!」の一言が炸裂。明らかに成長しているのはメイのほうだ(この後、メイはベラに「メイ自身が、男は外で仕事、女は家事・育児って考えに縛られてるんじゃないの?」と指摘されていた)。

ふてくされたモブは家出して、マサムネの家に転がり込むが、そこでマサムネの育児の様子を目の当たりにする。

「家事と育児は2人の仕事だからね」

とこともなげに言うマサムネ。モブはマサムネの妻、リツに「立派な旦那さんでリツさんは幸せですね」と語りかけるが、リツは家事・育児を分担してくれるから一緒にいるのではないと否定する。

「このバカな寝顔が、可愛いと思うからに決まってるじゃないですか」
「それだけ……?」
「お互いに、迷惑をかけあって、暮らしていくだけです」

モブがマサムネ夫婦から学んだのは、「夫としてのあり方」だけでなく、「夫婦としてのあり方」だった。家事や育児の分担も大切だが、根底において大切なのは「夫婦で支え合って生きていく」ということ。モブはそこが決定的にわかっていなかった(だから、簡単に妻の悪口を言っていた)。どうやら、ほんの小さな成長をして、モブはメイとさっちゃんの待つ家へと帰っていったようだ。

残り2話、メイとモブはどのような形の家族を築くのだろうか? また、福祉政策を進める魔王をどうやって討伐するのだろうか? ……魔王が征服したほうがみんな幸せになるような気がしているのは筆者だけじゃあるまい。

「伝説のお母さん」
NHKよるドラ 土曜夜11:30〜
https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/densetsu/

ライター。「エキレビ!」などでドラマ評を執筆。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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