ELAIZAさんの価値観のアップデート方法「面白がることほど、成長させてくれるものはない」

俳優やモデル、映画監督として幅広く活動している池田エライザさん(25)。25日(金)公開の映画「ライフ・ウィズ・ミュージック」では、アーティストELAIZAとして主題歌「Together」の日本版カバーソングアーティストを担当しました。昨年、歌手としての活動を発表したELAIZAさんに、価値観のアップデートの仕方や、落ち込んだ時の乗り越え方などを聞きました。
ELAIZAさん「本当は身近に愛をくれる人がいて、日常の中で変わることができる」 【画像】ELAIZAさん

色々な経験をしてシンプルになった

――最近はモデルや俳優にとどまらず、「夏、至るところ」で映画監督としてデビューし、歌手としての活動も本格的に始められました。25歳になった今、思うことは。

ELAIZAさん: 子どもの頃の価値観に“おまけがついたのが大人”だと思うことが増えてきました。失敗をした時に私の頭をよぎるのは周りの大人から受けてきた言葉なんです。「あ、これ小さい時にも言われたな」って。

幼い頃に疎ましく感じたことの一つ一つが、本当は愛情だったんですよね。無関心だったら、もらえない言葉をたくさんもらってきました。例えば、学校の図書館や駄菓子屋のおばちゃんから言われたことなど――。様々な経験を経て、考えることがシンプルになったからこそ、昔のことをよく思い出すんです。

――子どもの頃から変わっていないと思うこととは。

ELAIZA: 小学生の時、いつもと違う駄菓子屋に行ったら、見たことないお菓子が置いてあったんです。駄菓子屋のおばちゃんに、それを勧められたけど、私は食べるのを拒否して。その時に「ELAIZAは食わず嫌いだね」って言われました。小さかった私は以降、色んな場面で「食わず嫌い」を使いまくり(笑)。

でも、大人になってからも、変わってないんですよね。例えば「あの人に会ってみなよ」って言われても「上手く話せるか分からないし……」って躊躇している自分がいる。傾向として私は、未知のものと向き合うのが昔から苦手だったかもしれない。「いまも食わず嫌いだな、あの時も言われたな」って今、思い出しました。

大きなゲップも「オモロ」って言える

――新しいことを受け入れるのが苦手なタイプなのですか?

ELAIZA: 知らないものに対して臆病になる部分は、みんなあるんじゃないかな。「怖い」の度合いは違うだろうけど。本当は、ワクワクするべきなんですかね。
多くの人が衣食住を約束されているような国で生きてはいても、それが脅かされる可能性は外界にたくさんあるじゃないですか。だから外の世界が怖いのって当然だと思うんです。

ただ、知識欲を持つことが希望にもなると思ってて。「知りたい」って気持ちがあれば、「えいっ」って乗り越えられるはず。

――ご自身が監督をされた映画「夏、至るところ」では、身近な人と比べて悩み、刺激を受けながら成長していく少年が登場します。

ELAIZA: 自分とは違う考え方や価値観に出会った時に、人はびっくりするし、否定したくもなります。でも誰かを否定することで自分の価値観を強固にしている人は、ただその日の寝る前に安心したいだけ。得られるのは、その場しのぎのものでしかありません。

私って、悪口があんまり浮かばないんですよね。例えば大きい音でゲップするアシスタントちゃんがいたら「何それ、オモロ」って言えちゃう。

それは、面白がることほど、自分を成長させてくれるものってないと思っているから。一つ一つは些細なことかもしれないけど、“ちりつも”なんじゃないかな。「そういう考え方もあるのか」とか「私もああなりたいな」って学んで、価値観を更新するのは、面白がることから始まります。

自分がだめな状態のとき、共感には危なさも

――物事をネガティブに捉えることは?

ELAIZA: ネガティブに私はなりがちだから、ポジティブな人を見て「自分もあんな風になりたい」って思います。

この前、撮影のためにセリフを覚えて現場に行ったのに、撮影のときに頭が真っ白になってしまったことがあって。全然出てこなくて、やっと言えても何回もかんでしまったんですよ。本当に悔しくて、帰りの新幹線で泣きました。

現場で周りの人への配慮も全然できてなかったんですよね。カットがかかった時に「ごめんなさい」って言えたらよかったのに、言えなかった。「なんで」って、自分がびっくりしすぎてしまって。「次はちゃんとやるので、お願いします」ってきちんと言うべきでした。

周りに配慮できる人って、心がまっすぐできれい。そういう俳優さんもたくさんいるから、自分の“できなさ”を痛感しましたね。

――落ち込んだ時はどうするのですか。

ELAIZA: 失敗したり嫌なことがあったりした時って、人間には三つの対応があると思っていて。悪口を言うか、考えることを放棄するか、学ぶか。

その三択だったら「学ぶ」ってみんな言うと思うけど、実際は悪口を言う人が結構いますよね。だけど「あの人のせいで」とか悪口言ってる人って、すごくブスじゃないですか。それに自分が変わることでしか解決しない時ってたくさんありますよね。だったら初めから学んで、自分を変えていったほうがいいって私は考えます。

みんな共感を求めがちだけど、だめな状態の時に共感してくれる人って危ないとも思っていて。「相手のせいで、ELAIZAは悪くないよ」って言う人は、私の周りにはいなくて、「ELAIZAの考え方が偏っているんじゃない?」って指摘してくれる友達が多いんですよ。

積み上げてきた価値観に、おごらずにいさせてくれる、それでいて「ちょっと無理してるんじゃない?」って声をかけてくれるような人が身近にいてくれることは、ありがたいです。

ターニングポイントは、自分でつくれる

――telling,読者は20~30代の女性。結婚や出産、キャリアアップなどライフステージの変化が激しく、周囲の人と比べて落ち込むこともあります。

ELAIZA: 私も人と比べることもありますが、ふとしたときに、自分を“洗い直す”ようにしています。「できる人と距離を取ろうとしているかもしれない」とか「できない自分に安心しようとしてるかもしれない」とか。よくない思考を全部、洗い出すんです。

そして朝起きたら、ゆっくり深呼吸をして、カーテンを開けて窓の外を見て、人の営みを想像してみる。私の家は、リビングにあるソファーの近くのカーテンを開けると、街が見えます。それに、日光もよく入るんです。

太陽の光を浴びながらモヤモヤする気持ちを振り返ってみると、「たいしたことない」って思えて。「あんなに陰鬱だったのに、秒で切り替わるなんて」って、自分のチョロさを感じます(笑)。悩みなんてそんなもんだし、そもそも人生において、好ましいターニングポイントって自分でいくらでも作れるんですよ。気持ちさえあればね。

ELAIZAさん「本当は身近に愛をくれる人がいて、日常の中で変わることができる」 【画像】ELAIZAさん

●ELAIZAさんのプロフィール

1996年、福岡県出身。2009年、池田エライザとしてティーン誌『ニコラ』(新潮社)でモデルデビューし、13年に『CanCam』(小学館)の専属モデルに。映画「みんな!エスパーだよ!」(15年)や「ルームロンダリング」(18年)、「SUNNY 強い気持ち・強い愛」(同年)、「貞子」(19年)など多数の話題作に俳優として出演。20年、「夏、至るころ」で映画監督デビューし、21年から「ELAIZA」として音楽活動を開始した。

●映画「ライフ・ウィズ・ミュージック」

監督・製作・原案・脚本:Sia
出演:ケイト・ハドソン、マディ・ジーグラー、レスリー・オドムJr.
配給:フラッグ
公開:2月25日(金)全国公開

●スタッフクレジット

ヘアメイク:豊田健治(資生堂)/Toyota Kenji(shiseido)
スタイリスト:カトウリサ
衣装:ドレス¥81,400、ヘッドピース¥20,900、グローブ¥23,100(共に、ANNA SUI/アナ スイ ジャパン)

1989年、東京生まれ。2013年に入社後、記者・紙面編集者・telling,編集部を経て2022年4月から看護学生。好きなものは花、猫、美容、散歩、ランニング、料理、銭湯。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。