妊娠コロナ里帰りレポ。実家にいるのに会話は内線かLINEの軟禁生活!

新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、妊婦さんの多くは感染の不安を感じながら過ごしています。里帰り出産を拒否されたり、立ち会い出産や入院中の面会ができないこともあり、精神面の不安も……。今回は、夏に出産予定のれもんさんによる、コロナ禍の里帰りレポート第1弾をお届けします。

普通の妊婦生活を想定していた

2020年夏に出産することになった。妊娠が分かった昨年末には、オリンピックベイビーとか言われていた。その頃はまだ例年通りインフルエンザのことだけを心配し、「コロナ」の「コ」の字もまだ見当たらなかった。

産後しばらく単独行動ができなくなるのなら、安定期に入ったら旅行に行っておきたい。断酒はつらいがノンアルビールで妥協しつつ、おいしいものを食べ歩いておこう。行きたいところを脳内でリストアップしていた。

里帰り出産の予定で、帰省先は普段住んでいる東京から飛行機で1時間ちょっと。8か月ごろには帰省する必要があるけど、それまでは仕事をしつつ今まで通りに暮らすつもりでいた。大きなお腹を抱えて、満員電車に乗ったりもするんだろうなと思っていた。

 

通っていた病院でコロナが発生

3月、安定期に入った。ちょっと前まで付きまとっていた身体のダル重さ、眠気、疲れやすさが消え、明らかに動きやすくなった。なるほど、これが「安定」か……。

出かけやすい体調になったところで、世の中はすっかりコロナ禍で自粛ムード。本当ならこの時期に自治体や病院が実施している「母親学級」や「両親学級」で、妊娠中の暮らし方や育児に関する指導があるのだが、それもすべて中止。我々は勘で育てるしかないのだろうか。旅行の予定も食べ歩く予定もすべて諦め、何度かあったリモート飲み会(酒は飲めないが……)のときにちょっと贅沢にデリバリーすることで心を満たしたりした。

4月、「そのうちロックダウンになるのでは」という噂が出てきた。もし都市封鎖なんてされたら、里帰りはいったいどうなるんだろう。「リモートでできる仕事なんだし、早く帰省したほうがいい」と周りから言われるようになり、実家からも催促される。そうはいっても、東京で済ませておきたい用事もあるし、すぐにとはいかない。

そんな感じでモヤモヤ過ごしていたある日。一本の電話が入った。

「実は院内でコロナが発生しまして……」
「外来の患者さんには一切病院にお越しいただけない状況なので、明日の予約はキャンセルしていただいて」
「再開の目途はまったく立たない状況で……」

えっ、ええええ!!? 病院が閉鎖……? この時期の妊婦健診は4週に1度のペースだったので、前に行ったのはほぼ1か月前。接触はしてなさそうだ。次いつ行けるか分からないだなんて、診察の間隔がかなり空いてしまうな……。大丈夫なのだろうか。

予定より2か月以上早いが、もうこのタイミングで実家に帰ってしまおう。いや、「帰る」というより「逃げる」と言った方がピッタリくるな……。

まずは帰省先の病院に事情を話す。県外からの里帰りの場合、2週間(新型コロナの潜伏期間)待機してから通院して欲しいというルールはあるが、受け入れてもらえた。里帰りの受け入れ拒否の病院もあるらしい中、ありがたい。

緊急事態宣言真っ只中の羽田空港に向かった。パッとフロアを見渡して、数えるほどしか人がいない。便数は普段は4往復あるのに、1日1便に減らされている。乗客は10人ぐらいで、それぞれ席は離れている。いつもとは違う小型機に乗り込んだ。

ゴールデンウィーク直前とは思えない

都会とは違うコロナ事情

県をまたぐ移動によって地方にコロナを持ち込んだ人のニュースをたまに聞く。帰省先にも「都会へ行って持ち帰ったらしい」という若者がいて、そこから何人かに感染は広がった。その後ネット上では、感染者の職場や行動範囲などの真偽がまったく分からない情報が出回った。「感染者の家族が、〇〇町のスーパーでパートしてる」みたいな噂が広まり、スーパー側が否定したり……というようなこともあったっぽい。ネットだけじゃない。地元に住んでる知人の話では、職場も噂で持ち切りのようだ。

もし私が同じようにコロナを持ち帰ろうものなら、都会のように「ニュースになって隔離されて終わり」では済まないだろう。「あそこの娘がこんな時期に東京から帰ってきた」とか言われ、家族にも迷惑がかかる。なにか対策を取らねば。

地方は噂の広がり方が都会とは違う

実家には使っていない居住空間があった。何十年も前に、曾祖父・祖父・父の3世代で同居していたころの名残だ。水道もトイレもある。簡易キッチンもあり、食べ物を冷蔵庫に入れておいてもらえたら食うには困らない。ここでしばらく家族と顔を合わさず隔離されて暮らすことも可能だ。

もしもに備えて、2週間のあいだ隔離されたほうが安心なんじゃないか。こうしてまるで軟禁でもされているかのような生活が始まった。

 

2週間の家庭内隔離生活

食事は夕食だけは部屋のドアの前に置かれた。それを部屋に持ち入り、ひとりで食べる。それ以外は、冷蔵庫に入れてもらったものを使って自分で用意する。

連日決まった時間になると、「クマが出たので山に入るときは鈴を持ち歩くように」と、部屋に地域の有線放送が流れてくる。まだ捕まらないのか……と思いつつ食事を摂る日々が数日続いた。

実家にいるのに会話は内線かLINE。風呂は家族が寝静まってから入る。状況が特殊過ぎて笑えてくる。

ここに逃げてきたのはゴールデンウィークのちょっと前という時期で、気候もムダに爽やかで気持ちがいい。

ちょっと郊外に行けばこんなに人もいないのなら、出歩いてても問題ないのでは……

たまに欲しいものを買いにコンビニに出かけようとすると母が「こっちだって協力してるのに、そんなことされたら意味がない」とか言い出す。「いちいちうるさいな!!」とこっちも反抗期の中学生女子みたいな態度になる。制限があることで、やっぱりストレスも溜まりやすいのだ……。

 

つぎは面会NGの対策を考え中

体調も良好のまま、何事もなく帰省から2週間が経った。家族との食事も解禁となり、鍋を囲んで歓迎された。いきなりの密だ。そしてやっと病院にも行ける! この時点で1か月半も医者にかかっていない状態だったので、病院でも心配してもらった。

経過も特に問題なく、転院は完了。ちょっとしたサバイバル感があったせいか、なんだかゲームをクリアでもしたかのような達成感があった。なんだこれ……。

そこから2か月が経ち、今は出産も迫ってきているが、まだ「出産の立ち合いはできるのか」、「家族は病院に面会に来られるのか」が分からないという問題はある。緊急事態宣言の解除後、ちょっと緩和気味にはなっていたが、6月末からの感染者数の増加でやっぱりダメとなっている病院は多いのだ。

面会NGとなると、産んだ子を家族に見せる手段はビデオ通話になるだろう。入院する総合病院は基本Wi-Fi禁止で、個室ならばネット環境が整ってるため、「ビデオ通話をするために個室を希望するべきか……」というコロナ禍特有の悩みがまた生じている。

産んだら産んだでまた「東京に戻ってもいいのか」問題が出てくるのだと思うし、まだまだ先は見えない。

ライター/上京から20年経っても都会に慣れない、心はずっと地方民。初めての出産準備中。