育児と仕事を両立中の広末涼子さん、「家族は出発点で、家庭が帰る場所」

11月11日から公開の映画「あちらにいる鬼」で、夫の奔放な女性関係を黙認する妻を演じた俳優の広末涼子さん。プライベートでは、3人の子どもを育てる母でもあります。子どもへの接し方や、年齢を重ねることで感じた思いなどについて聞きました。
広末涼子さん、出演の映画「あちらにいる鬼」は “女性の在り方を投げかけてくる” 【画像】広末涼子さんのインタビュー写真

――広末さんは、3人の子どもの母でもいらっしゃいます。仕事と家事や育児のバランスには今でも苦心されているとか。

広末涼子さん(以下、広末): どんな仕事をしていても同じだと思うんですが、母親ってどうしても家族や子どもを優先してしまうというか……。やっぱり自分より大切な存在ができることは1番の喜びなので、手を抜けない。

でも、私は女優業も同じくらい好き。双方をきちんとするのはすごく大変なことだとは思うんですが、両立のチャンスをいただけていることに感謝しています。その意味でも、女優として様々な作品に関わっていきたいですね。日々、全力投球です。

母親としてできることは、すべてしたい

――今回の映画「あちらにいる鬼」では、作家の夫の奔放な女性関係に目をつぶる妻・笙子(しょうこ)を演じられました。母でもある笙子との共通点はありましたか。

広末: 雰囲気こそ違うけど、そこまでかけ離れていない気もします。私も自分の不安から感情を露わにすることはないし、子どもを過剰に“子ども扱い”をしない。
一見、女性的に見えるんですが、実際は作家の夫の代わりに文章を書くこともあった笙子。自身を客観視できるような部分もあり、普通ではない感覚を持ってる人です。そういう空気感は自分と近いのかもしれません。

――お子さんに「これだけは守ってほしい」ということはありますか。

広末: うーん……。「優しくて強い子になってほしい」というのは、ずっと言い続けています。でも、それ以外には「こうなってほしい」とか「これをしないでほしい」というのは無くて。私は母親としてできることは、すべてしたいと思って関わっていて、愛情表現はしてもしても“し過ぎる”ことはないとも思っています。愛されているという自信が、自己肯定感に繫がると考えているんですよね。
家族は出発点で、家庭が帰る場所。安心できる場所があることで、他者を好きになれたり、挫折を味わったときに克服できたりすると思うんです。

書くことは自分の心の中をさらけ出す“感覚”

――広末さんは4月に『ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち』(宝島社)を上梓されました。哲学者が残した言葉や尊敬する女性たちの言葉を自ら選び、ご自身の思いをつづったエッセイです。文章を書くという行為はいかがでしたか。

広末: 私の文章なんて、分量的にも内容的にもプロの方に比べれば幼稚ですが、書くことは自分の心の中をさらけ出す感覚がありました。演じるときは台本があり、言葉が既にあるので安心感があります。
一方、自分の言葉を文章として出すのは違う。どう評価されるかも怖くて、若いときは恥ずかしくてできなかった。
でも、この年齢になり、もし誰かを元気にできたり、同じように育児をしている人に共感してもらえたり。そういうチャンスがあったら、挑戦してみたいと思えるようになりました。今回、書くのには想像以上に時間がかかりましたが、自分と向き合うことはできました。

自分の過去を整理できたというと変ですけど、アルバムをめくり返しているような感覚にもなれたので、いい機会を貰えたと思っています。ただ、作家さんのように書き続けるのは難しいですね。情報のアンテナも張れないし、引き出しも少ないし、ボキャブラリーも……(笑)。

年を重ねれば重ねるほど、面白い

――広末さんは、仕事と育児を両立されていますが、20代後半から40代前半のtelling,読者の女性の中には「やりたいことがあっても踏み出せない」という人もいます。

広末: 結婚を取るか、仕事を続けるか――と悩む人も多いようですが、私は「どちらも諦めないでほしい」と考えます。
特に結婚や出産、育児は1人でできることではなく、タイミングや出会いが大切だから、機会を逃してほしくない。かけがえのないものだと思います。

一方で、仕事に関しては「自分の代わりをできる人はいない」と考えてしまいがち。私もそうでした。だけど、実際は私がいなくても回ります(笑)。
仕事に限らず、色んなことをいったん手放したとしても、また「やりたい」と強く思えば、復活できることもある。だから、どんどんチャレンジをしてほしいし、するべきだと思いますね。

――年齢を重ねるのが楽しみという人もいる一方、怖いという人も。
広末: 年を重ねれば重ねるほど、どんどん面白くなっているので、ポジティブに捉えた方がいいと思います。10代、20代は突っ走って、視野も狭い。30代から40代になってから、「これまでとは、人や社会に対する見方が、変わってきたな」と思いました。ということは50代、60代になって40代の今を振り返ると、「あの時はまだまだ若かったな」って、きっとなるはずです。

そんな経験ができるのだから、年齢を重ねることは可能性に満ちていると思います。年を重ねれば重ねるほど楽しくなりますよ、絶対。

広末涼子さん、出演の映画「あちらにいる鬼」は “女性の在り方を投げかけてくる” 【画像】広末涼子さんのインタビュー写真

●広末涼子(ひろすえ・りょうこ)さんのプロフィール

1980年、高知市生まれ。94年、クレアラシルのCMでデビュー。97年、「MajiでKoiする5秒前」で歌手デビュー。主な出演作に映画「鉄道員」「おくりびと」、ドラマ「龍馬伝」(NHK)、「ユニコーンに乗って」(TBS系)など。2023年前期のNHK連続テレビ小説「らんまん」への出演が決まっている。
◆ヘアメイク:倉田明美(THYMON Inc.
◆スタイリスト:道端亜未

■あちらにいる鬼

監督:廣木隆一
脚本:荒井晴彦
原作:井上荒野「あちらにいる鬼」(朝日文庫)
出演:寺島しのぶ、豊川悦司/広末涼子、高良健吾、村上淳、蓮佛美沙子、佐野岳、宇野祥平、丘みつ子ほか
©2022「あちらにいる鬼」製作委員会

ハイボールと阪神タイガースを愛するアラフォーおひとりさま。神戸で生まれ育ち、学生時代は高知、千葉、名古屋と国内を転々……。雑誌で週刊朝日とAERA、新聞では文化部と社会部などを経験し、現在telling,編集部。20年以上の1人暮らしを経て、そろそろ限界を感じています。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。
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