ミレニアル女子がクイーンにはまるワケ KISSコンサートで感じた「あれっ?」はお願いNGで

イギリスのロックバンド「クイーン」が1月20日、来日しました。25日から始まるコンサートツアーは、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットでファンのすそ野が大きく広がってから初めてとなります。1970年代から追いかけるコアなファンに加え、ミレニアル世代もこの熱気を後押ししているようです。来日コンサートの全公演に行くという20代女性が、その背景をtelling,に語ってくれました。

 

4公演で20万円つぎ込む

 

「女性的な見方をすると、ブライアン・メイはカワイイおじいちゃん。ロジャー・テイラーはシブイおじいさん」

 

「今回の来日コンサートは最後になる可能性が高いので、4公演すべてに申し込みました」

 

こう語るのは、東京都内の大学に通う末石美佐希さん(23)です。コンサートのチケット代のほか、15日から東京・日本橋高島屋で始まった「クイーン展ジャパン」https://www.queen-exhibition.jp/の入場料、大阪や名古屋での公演に行くための新幹線やホテル代、グッズ購入費を含めると出費は20万円近くになるそうです。

 

今回のツアーではキャパシティが大きい東京ドーム公演がなかったため、さいたまスーパーアリーナのチケットが取れず、高速バスで節約しながら名古屋公演に行くミレニアル女子もいます。そこまでしてクイーンを追い続けるのはなぜなのでしょうか?

 

口々に出る言葉は「最後かもしれない」です。

 

クイーンは昨年春から北米ツアーを行い、今回の韓国ツアーを終え、日本の後は、ニュージーランド、オーストラリアのツアーが待っています。フレディ・マーキュリーの代わりにボーカルをつとめるアダム・ランバートは別にして、ブライアン・メイもロジャー・テイラーもいい年齢を重ねています。ライブでの一体感を味わえるチャンスを逃したくない、という思いからでしょう。

 

末石さんがブライアン・メイからもらった手紙=末石さん提供

はまった二つの理由

 

末石さんの家庭では、父親の影響でリビングにはクイーンの曲が流れていたそうです。そんな環境の中、13歳の時、家にあったクイーンの特番を録画したDVDを見て「はまった」末石さん。これまでサマーソニック、武道館コンサートの2回、クイーンのライブを見たときの印象が強烈に残っているといいます。

 

一つは、「ライブ感」。

 

DVDや映画と違って、ライブは目で追える範囲が違います。音圧もすごい。ライブによって演出の違いもありますが、総じてきれいでゴージャスなんです。大きなコンサートは後ろの方の席から見ると、アーティストは米粒ぐらいにしか見えませんが、そんな席でもステージ全体を見て楽しめるような演出をしてくれるので飽きないし、魅了させられます」

 

もう一つの魅力として、サマソニで感じた他のバンドに負けない「カリスマ性」を挙げます。

 

「圧倒的なカリスマ性と、年齢を感じさせないパワフルさが印象的でした。衰えを感じさせませんね」

 

スタンディングなきコンサートはクイーンでない

 

とはいえ、少し不安もあるそうです。アメリカのロックバンド「KISS」(キッス)が201912月に東京ドームで行ったコンサートで感じた「あれっ?」です。

 

「キッスをけなすわけではありませんが、私が座っていたドームのスタンド席周辺では座って聴いている人が多いことに驚きました。スタンディングはアンコールの時だけ。これまで見たクイーンのコンサートは観客ほぼ全員がスタンディングだったので、あれっ?という感じでした」

 

コンサート自体は良かったという声をよく聞きますが、観る側にとっての「期待」はこのように様々です。ミレニアル世代のファンにとっては、70年代や80年代の全盛期を知るファンたちの姿に、少しがっかりしたようです。

 

バント結成から50年ほど経ってもツアーを続けられるのは、ボーカルにアダム・ランバートが参加しているから。ツアー名も「クイーン+アダム・ランバート」です。

 

「本当にアダムに感謝です。アダムだって自身のソロ活動があるのに、ブライアンとロジャーのためにわざわざ時間を割いて、のどを整えて、ステージに立ってくれています。いつ自分のソロに専念したい、と言われても仕方がありません。アダムファンには、取っちゃってごめんね、という心境です」

 

映画公開2週間で20代に火が付いた

 

映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、通常の映画のプロモーションの常識を覆したことで話題になりました。日本の配給会社「20世紀フォックス映画」マーケティング本部長の星野有香さんは当時、朝日新聞の取材に、こんな分析を教えてくれました。

 

「ボヘミアンラプソディ」でネット検索した人は、公開前の1カ月と公開後の約2週間を比較すると、公開前は男性が6割を占め、50代が中心だったのが、公開後は女性が6割となり、世代も20代と50代が中心に変わりました。(withnews「『クイーン』ブーム、手放しで喜べない理由 公開5週目の異常事態」https://withnews.jp/article/f0181216000qq000000000000000W07q10501qq000018491A

 

当時取材で説明していた仮説はこうです。

 

1)予告編を見る

2)クイーンファンが駆け付ける

3)物語性が話題になる

4SNSで若い世代が感動を発信する

 

「見てみたらもっとよかった」など、SNSを通じて「感動の共有」が広がっていると見ています。

 

あれから1年。末石さんはライト層の変化について冷静な見方をしています。

 

「ガーっと熱量が上がって、その後、スーっと冷めた人もいます。映画がロードショーとして上映されているときには、あんなに盛り上がっていたのに、今はまったくブライアンやロジャーの話をしなくなった人もいます。ただ、若い世代でも一定数の人たちは、今回のコンサートを心待ちにしています」

 

「ギターを持っているブライアンやドラムをたたいているロジャー以外、つまりステージ以外での日常の彼らを見てみたいのです。彼らの内面を垣間見られたらうれしいですね」

 

サブスクではなくレコードで没入

 

ミレニアル世代の中には、通学や移動中のほか、勉強中にも音楽を聴く、いわば「音楽依存症」と言われる人がいます。末石さんもその一人ですが、大おじが最近亡くなり、愛用していたレコードプレーヤーを譲り受けたそうです。サブスクリプションで音楽を聴くことが当然の時代ですが、「当時のレコードに針を置いて、腰を据えていく方がいいです。クイーンの世界に没入できます」と教えてくれました。

 

レコードプレーヤーで聴くクイーンはまた別な良さがあるという=末石さん提供

おすすめは3枚目のアルバム『Sheer Heart Attack』(シアー・ハート・アタック)。『Killer Queen』(キラー・クイーン)などが収められています。「全体的に聴きやすいですし……」。

 

でも、元気がないときにはアルバム『Jazz』(ジャズ)を聴くことをすすめてくれました。『Don't Stop Me Now』(ドント・ストップ・ミー・ナウ)が収められているから。

 

フレディのことを思い出すときは、フレディ亡き後、ブライアンが作り、3人が最後に演奏した『No-One but You』(ノー・ワン・バット・ユー)。

 

ロックを聴きたいと感じたときは、6枚目のアルバム『News Of The World』(世界に捧ぐ)をおすすめしているそうです。

 

「私は歌詞よりメロディーで曲を選んでいます」

 

末石さんが集めたクイーンのレコード=末石さん提供

クイーンを多角的に書いていきます

クイーンを巡る話題について、朝日新聞社が運営するウェブメディア「telling,」のほか、「withnews」や「論座」でもそれぞれの視点で記事を順次配信していきます。

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医療や暮らしを中心に幅広いテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクターやweb編集者を経てノマド中。withnewsにも執筆中。