花屋さん、今日はどのお花がおすすめですか―キバナコスモス
●花屋さん、今日はどのお花がおすすめですか。04
秋は原色
暑い夏が過ぎると、色とりどりの花が市場にあふれてきます。「春の淡い色とはまた違って、秋は原色みたいな、濃いめのはっきりした色の花が多い印象」。そう話してくれたのは、今回お訪ねしたCHAJIN(チャジン)さん。鎌倉を拠点に教室、生け込み、イベントやメディアでの花生けなどさまざまに活躍するフラワーアーティストです。

そんな秋の花のなかでも、今回の主役はキバナコスモス。上の写真のオレンジ色の花です。一般的なコスモスよりも小さくて、オレンジ色以外に黄色もあります。オレンジ色のコスモスってなんだか新鮮! CHAJINさんによれば、8月の終わりから9月に市場に登場する「秋のお知らせ役」のような存在だそうです。
そのまま飾ってもかわいいですが、せっかくのカラフルな秋。こうして盛り盛り器に飾るのもステキです。写真ではキバナコスモスのほかにミシマサイコ、ケイトウ、センニチコウ、オヤマボクチ、セロシアが生けられています。この贅沢な色の多重奏は秋ならでは!
ちなみにキバナコスモスは茎が細いので、ほかの花と生けるときは最後に入れると茎が折れたりせず、スムーズだと教えていただきました。なるほど〜。
あともう一つ、今回のおすすめがセンニチコウ。

この花束に散りばめられたピンクの丸い花がセンニチコウ。さわるとちょっとカサカサ、トゲトゲ。ドライフラワーにもなりやすい花世界の名脇役です。「こんな感じで点在させると水玉模様みたいな感じになってかわいいですよ〜」というCHAJINさんの生け方に、もう胸キュン! こうしてデザイン的に取り入れると、単体で見るのとはまた違った魅力がありますね!!
この花束でセンニチコウ以外に使われているのはシュウメイギク、フジバカマ、秋色テマリソウ、アゲラタム。花束っぽく生ける場合は、花の面を揃えるように意識して束ねてくとやりやすいそうです。水を換えるときにまた組み替えてみるなど、自由にできたものを受け入れるくらいのユルい感じで楽しむとよいとのこと。
花って癒やし
CHAJINさんのアトリエは、鎌倉の白い一軒家にあります。窓の緑が美しいこの場所で月1回、その月の代表選手的な花と、お花に合った器を使ったお教室を開催。都内の池袋などでも定期的に行われています。

CHAJINさんの花教室では、基本的にサンプルはありません。生け方をならうのではなく、自由に花と触れ合う時間なのだそうです。根強いファンも多く、長い人は15年も通っているそう(!)で、下は20代から上は80代まで幅広い世代が集まります。生けたあとはお菓子とお茶でおしゃべり。
「お仕事なんかで疲れている人が生けにきてくれることもあって、花って単純に生けるだけ以外に気づきや癒やしなんかの“副次的な効果”があるんだなって思います。なにかに無心になれることってなかなかないと思いますが、花を生けることでそうなれるのかもしれません」

上の写真がCHAJINさん。とってもお茶目でほんわ〜かしていて、花と同じような癒やしのオーラを放っていると私は勝手に思っています。奥様のノリコさんとのコンビネーションも抜群! お二人のやわらかな空気感が、生けられる花にも表れているような。
都内の花屋さんで勤め、23年ほど前に独立。はじめは六角形の小屋で花屋さんをオープンしましたが、半年ほどして「やりたいことってこれじゃないな」と感じて考えた結果、メディアを通しての表現活動を主体にしようと雑誌回りをしたそうです。
その後、雑誌掲載や書籍出版などを軸に活動開始。しかし、花屋さん時代のお客さんからどうしてもレッスンをしてほしいとアツい要望を受け、1回だけならとやってみたところ、評判が評判を呼んでいつしかレッスンも大きな割合を占めるようになりました。






- ●今回お訪ねしたフラワーアーティストさん
- CHAJIN(福田たかゆき)さん
- フラワーアーティスト。暮らしまわりの雑貨と季節の花を合わせ、個性的でありながらもカジュアルな花あしらい、存在感あるリースの作品が得意技。雑誌や広告の花生け、展示会の花生けの他、鎌倉のアトリエや都内各所で開催中の花教室も人気。著書に『きょうの花活け』(誠文堂新光社刊)など。紅茶好きでプロレス好きで愛猫家。鎌倉在住。
- instagram @chajin_eye
